研究課題/領域番号 |
24520647
|
研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
富山 真知子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10237133)
|
キーワード | 第二言語習得 / ストレス / コーチゾル値 / 情意要因 / 言語不安 |
研究概要 |
本研究の目的は、第二言語習得(外国語習得を含む)における学習者のストレスが、その習得の成果にいかにかかわるかを検証することにある。具体的には以下の2点を主目的とする。①今まで第二言語習得分野では使用されることのなかったストレスの測定法として、人間の生理的反応の側面からコーチゾル値を用い、それが第二言語習得研究においても有益かつ有効な手段であることを示す。②実際にコーチゾル値測定による実験を行い、学習者のストレスと第二言語習得の成果との関係を検証する。 平成25年度は3年間にわたる研究期間の本実験の実施期間という位置づけである。最終的に、第1学期には53名、第2学期には53名、第3学期には28名、計134名の参加者を得て、実験を遂行した。同時に、すべてのデータが揃った前年度の予備実験の52名分の詳細分析と本年度第1学期分の一部データ分析を行った。第2、第3学期のデータ分に関しては、ドイツの検査機関からのコーチゾル値の報告が到着し次第、行う予定である。 予備実験のデータからは以下の事柄が判明した。英語科目履修者の方がその他の外国語科目履修者よりも、女子学生の方が男子学生よりも、日本語を母語とする学生の方がその他の言語を母語とする学生よりも、18歳台の学生が20歳台の学生よりも、それぞれコーチゾル値測定によるストレス度が統計上有意に高いこと。履修科目の成績と、コーチゾル値測定によるストレス度との相関はないこと。また、自己申告測定によるストレス度との相関もないこと。自己申告測定による言語不安と自己申告によるストレス度との相関があること。英語科目履修者に関しては、自己申告測定によるストレス度及び言語不安と成績には相関があること。しかし、コーチゾル値測定によるストレス度との相関はないこと。第1学期分のデータに関して、コーチゾル値は予備実験の結果とほぼ同様の傾向がみられている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コーチゾル値測定を依頼しているドイツ、ドレスデンの検査機関からの報告が、前年度もそうであったが、さらに遅れた(最終的に3ヶ月かかった)ためである。検査機関からの理由説明では、報告書がメール送信途上で紛失し、こちらからの督促があるまで気がつかなかったことを挙げている。なお、日本における検査機関は研究者の知る限り存在しない。また、参加者募集に関して、本年度第3学期には予定していた人数の約半分にしか満たなかった。参加同意書に署名をし、参加の意思表示があっても、毛髪提供、事後アンケート記入等、すべての手続きを完了するまでに欠損が生じ、データとして使用できる実際参加者数の目減りが予想以上にあった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度第3学期に予定人数の参加者が集まらなかったことに対する措置として、26年度第1学期に再度実験を行い、参加者を補充する。分析に関しては、第2学期分、第3学期分それぞれコーチゾル値の報告を待って、随時開始する。本年度第1学期分の、コーチゾル値を含めたデータが揃った時点ですべてのデータを統合し、最終結果を得、それをもとに学会発表を行うとともに、学術誌投稿のための原稿執筆にとりかかる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
毛髪検査のコーチゾル値報告が遅れたため、報告完了後の検査料の支払いも後ろ倒しになったことによる。また、実験参加者数が予定より下廻ったため、謝礼品及び毛髪検査費も予定より少額となった。さらには予定していた海外出張旅費を個人研究費で賄ったことによる。 後ろ倒しになっている毛髪検査費への支払いをはじめとして、当初、26年度には予定されていなかった実験を第1学期に再度行い、参加者数を増やす予定であり、それに伴って、謝礼品、毛髪検査費等に使用する予定である。また、26年度はすべてのデータを分析する最終年にあたり、データの統計処理等に関わる補助業務等の支出も見込まれる。加えて、26年度は研究成果を海外での学会発表を通じて報告する予定であり、海外出張旅費にも使用する計画である。
|