研究課題/領域番号 |
24520658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大須賀 直子 明治大学, 国際日本学部, 准教授 (40514162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中間言語語用論 / スピーチアクト |
研究概要 |
本研究の目的は、「依頼」、「断り」、「感謝」のスピーチアクトにおいて、英語母語話者と日本人英語学習者がどのような異なる特徴または共通した特徴を示すかについて探り、さらに、日本人英語学習者がセメスター留学を経ると、どのような発達を示すかを探ることにある。データの収集は、『MET』という研究者が開発したコンピュータを利用した調査ツールを用いて、英語母語話者および留学予定の日本人英語学習者に回答してもらう、という方法をとる。METは24のシナリオから成っており、ポライトネスに影響を与える話し手と聞き手の力関係および内容の軽重の2要因について網羅するような構成になっている。2012年度にまずおこなったことは、前年度から本年度初めにかけて実施したパイロットスタディの結果の分析である。このパイロットスタディの目的は、METの有効性の確認と調査方法自体の改善点の確認である。パイロットスタディでは、英語母語話者と日本人留学経験者、および日本人留学未経験者の3つのグループにMETに回答してもらった。結果分析の結果、3つのスピーチアクトすべてにおいて、日本人留学経験者は、英語母語話者と日本人未経験者の中間の特徴を示し、留学経験が語用論的側面において影響を与え、学習者が母語話者のストラテジーを取り入れていることが確認された。このうち「依頼」の分析結果について論文にまとめ、明治大学国際日本学部の紀要に発表した。METおよびその他の調査方法についてもとくに問題が発見されなかったため、変更のないまま、本調査を開始した。交換留学で来日したばかりの英語母語話者およびセメスター留学が決定した日本人学生に調査協力を依頼し、METに回答をしてもらった。また、年度内に帰国した学生からは、英語力が落ちないうちにデータを収集した方がよいと判断し、2回目のMET回答をおこなってもらった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況については、当初の計画よりも早まっている部分と遅れている部分がある。早まっている部分は、英語版METによるデータの収集である。当初の予定では、新年度に入ってから2回目のMETを日本人学生におこなってもらおうと思っていたが、セメスター留学者が1月末から帰国を開始し、帰国後比較的早い段階で英語力が低下するとの指摘があったので、留学の効果が薄れないうちにデータを収集した方がよいと判断して、2回目のデータ収集の一部を年度内におこなった。一方、当初の計画では、1年目に日本語版のMETを作成しデータを収集する予定だったが、こちらは延期して2年目の2013年度におこなうことにした。これは、当初は日本語版METの被験者を英語版と別の人にすることを考えていたが、同一人を使うことに変更したためである。その方が転移についてより正確に調べられるメリットがあるからであるが、一方で英語版のMETからの練習効果というデメリットも生じる。そのデメリットを少しでも軽減するため、日本語版METをおこなうのは、なるべく間を開けて2013年12月頃に延期することにした。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、すでに収集済みのデータの分析を進めるとともに、日本語版METを作成して、12月頃に日本人学生に回答してもらう予定である。すでに収集済みのデータの分析によって、留学経験が日本人英語学習者の「依頼」、「断り」、「感謝」のスピーチアクトにおけるストラテジー使用にどのような影響を与えるかについて、何らかの示唆が得られるはずなので、論文にまとめたいと考えている。また、日本語版METの作成には手間と時間がかかるが、前期中に写真撮影や録音を終え、夏休みには完成させる予定である。12月の本調査の前にパイロットスタディをおこないたい。 文献調査についてもまだ不足を感じているので、できる限り関連の文献を集めて読みたいと考えている。とくに、パイロットスタディの結果から、pragmatic routinesと呼ばれる慣用表現の習得の役割が重要ではないかと考えるようになったので、2013年度はこの側面での文献調査に力を入れる予定である。 国内外の学会にも積極的に参加して、同分野の研究の最新動向を探り、また、pragmaticsの分野で優れているランカスター大学にも出向き、研究者の意見を聞いたり、資料収集をおこなったりしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究協力者への謝金、日本語版METの作成費、国内外の学会への参加費用、海外の大学での研究や資料収集にかかる旅費等、図書購入費などに研究費を使用する予定である。
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