研究課題/領域番号 |
24520658
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
大須賀 直子 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40514162)
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キーワード | 中間言語語用論 / スピーチアクト / 依頼 / 断り / 感謝 / 留学 / pragmatic routines |
研究概要 |
本研究の目的は、日本人学習者が英語を使用する際の語用論的ストラテジーの特徴やその発達について、共時的および通時的の両面から探ることである。2013年度は、共時的な側面については、それまでに収集したデータに基づいて、英語母語話者、留学経験のある日本人学生、留学経験のない日本人学生の3群(各群15人ずつ)に分けて、依頼というスピーチアクトにおいてどのような共通点または相違点が出るかを検討した。その結果、留学未経験者は直接的依頼ストラテジーをよく使うこと、また、英語母語話者が使わない不自然な表現をよく使うことがわかった。一方、留学経験者は、聞き手との力関係が対等で依頼する内容が軽い場合には、かなり英語母語話者に近い依頼ストラテジーを使うことができ、直接的な依頼ストラテジーや不自然な表現の使用はすくないが、相手が目上の場合や依頼内容が重い場合において、英語母語話者が使う丁寧な依頼表現を使えていないことがわかった。とくに"I was wondering if"や〝Would you mind"のような難易度の高いconventional expressionsを、留学経験を経ても全く使えていなかった。この共時的なデータ分析の結果についてはJALTの全国大会(神戸)において発表した。 一方、通時的データについては、4月にほぼ取り終えることができたので、書き起こしをおこない、データ分析を開始した。その結果、依頼・断り・感謝の3種類のスピーチアクトを個別に分析する以外にも、convetnional expressions/pragmatic routinesの習得の難しさを追究する必要を感じ、その側面からのデータ分析もおこなった。 また、母語からの転移を調べるために、コンピュータ利用のツールであるMETの日本語版を作成し、15人の被験者からデータを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集については予定通り進んでいる。25年度中に英語の通時的データと日本語のデータをとることができた。ただ、途中5人の参加者が脱落したため、予定の20人を確保するために、26年度にさらに5人からデータをとることにした。また、当初予定になかった統制群を設定してのデータ収集をおこなうことになったため、次年度も引き続きデータ収集をおこなう。 データ分析については、ほぼ予定通りに進んでいるが、分析方法についてはさらなる検討の必要を感じている。 論文執筆については、もう少し進めたかったが、データ分析に時間がかかっていることからやや頓挫しており、26年度に集中して行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、補足的なデータの収集をおこなう一方で、収集したデータについてappropriatenessの評価を英語母語話者に依頼しておこなう予定である。 さらに、これまでのデータ分析の精緻化を進める予定である。個別のスピーチアクトによる分析、pragmatic routinesの側面での分析、母語からの転移についての分析、appropriatenessについての分析など、分析すべき事項がたくさんあり、どのような分析方法が一番良いかを探るため、さらなる文献研究が必要である。 また、研究結果を順次発表していく予定で、複数の国際学会発表を予定している。 論文についても執筆をおこなう予定である。
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