研究課題/領域番号 |
24520662
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中エリス 伸枝 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70593698)
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キーワード | ブレンデッドラーニング / TESOL / 教授法 / スピーキング / Actor-Network Theory |
研究概要 |
25年度は大学1年生用英語クラス(コミュニケーション)1クラスと2年生用英語クラス(ディスカッション、プレゼンテーション、レポート)2クラスを全てコンピュータールームで行った。24年度では授業をしながらデータを収集するアクションリサーチの方法ではデータを収集する事が困難だったので、25年度では研究補助者を雇用し授業中のビデオ、オーディオ、ログを取ってもらった。 これにより、使用教室内を観察し、アクターネットワーク論に基づくヒューマンアクター(HA)と、人間ではないノン・ヒューマンアクター(NHA)を特定できた。NHAはコンピューターが主で従来のノートテイキングの代わりにWordやPowerPoint(PPT)にインターネットで調べた情報やディスカッションの決定事項を直接入力しデータを保存する行動が多くみられた。また、授業は全て英語で行われ、その内容やタスクの説明はPPT使用し視覚でもサポートしたが、前期のデータでは履修者によっては全く理解をしていない事がログで分かり、後期にブレンデッドラーニング(BL)による更なるサポートが必要だという結論に至った。 25年後期ではBLの一つの形であるClassroom Flippingの教授法を取り入れ、授業内容や課題の説明をビデオで授業開始前に配信した。英語のレベルが低い履修者が多いクラス(TOEIC 200-300点)では、授業中、授業後でもそのビデオを繰り返しみていた事が分かり、アンケートでは授業や課題を理解するのに役立ったという意見が多かった。また、授業中も課題やタスクの内容を理解している学生が理解をしていない学生に対してビデオの一部分を見せ内容を説明している場面もあった。しかし、LMSのシステムに記録されるトラッキングシステムによってビデオを全くみない履修者もいる事が分かり、ビデオをみる事を義務づける必要があるという結論になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画とは違い、1年生のスピーキングクラスの担当が3から1コマになり2年生のクラスが増えたため、データ収集の計画をかえなければならなかった。また、前年度からコンピューターが入れ替わり、デスクトップからラップトップの変わった事によりノンヒューマン・アクターの役割も当然変わると思われた為、25年度前半にもう一度24年度に収集したようにコンピュータールームでの普段の授業風景のデータを収集した。その他の理由としては、授業をしながらデータを集めるのは困難な為研究補助者を雇い授業中のビデオレコーディング、音声収録、授業に起こったことのログを記録してもらうことにしたが、トレーニングが必要だった為、使えるビデオ等が限られてしまいデータのソーティングに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度前期は昨年度収集したデータの分析に使用する。これはディスカッションの時間がClassroom Flippingを取り入れる前と後ではどう違うかや、ディスカッションの内容、使用言語の選択、英語発話の時の文法の複雑度などを見る。文法の複雑度はCAF (Complexity, Accuracy, Fluency)を使って当初分析する予定だったが、履修者の英語習熟度が低く、文章になっていない場合が多い為(単語レベルの発話がほとんど)、一般的に用いるCAFを簡易化し、一回の発話でのT-unitの個数、スピーチの長さ、そして空白休止の回数と長さ、そして一般的な文法の正誤を分析する。一分間に発話される字数は一般的だが、この研究の対象者は一回につき一分間以上話す事はまれなので、これは省略する事にした。 また、英語の授業だがタスクが複雑な場合は日本語を使用して英語のタスクを修了させる学習者が大多数なためClassroom Flippingをした場合、ディスカッションの時間が増えたか、英語の使用頻度が高くなったか、またスピーチの質が向上したかをみる予定である。26年後期は前期のデータ分析からわかった課題を修正し教授法を改良したものを実践し、そのデータを分析してブレンデッドラーニングの教授法の理論を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
英語と日本語両方のレベルが高い研究補助者が見つからず雇用が一人になったことと、動画の制作とエディットができるコンピューターを購入する予定だったが適当なものが見つからずまだ購入していない。 2人程度の研究補助者の雇用と26年度後期に20-25本の制作した動画を授業に取り入れる予定なので、後期授業が始まる前に動画制作用コンピューターの購入予定。
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