研究課題/領域番号 |
24520666
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐々木 みゆき 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (60241147)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 第二言語ライティング力 / ダイナミックシステムアプローチ / 日本人英語学習者 / 多機能言語能力 / 第二言語ライティング方略 / プロトコールデータ / 質的研究 / 量的研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本人大学生の英語力、日英作文力、日英語のライティング知識や方略が、3年半の間にどのように変化し相互に影響しあうかを、現在応用言語学の分野で最も注目されているDynamic Systems Theory Approach(DST:ダイナミックシステム理論アプローチ)の視点から明らかにすることを目的にしている。人間の言語発達を「様々な要素が相互に関係しあい、直線的でない発達をとげる複雑なシステム」と捉えるDSTを研究枠とすることは、従来別々のものとされてきた第1言語と第2言語の作文力をひとつの「多機能言語能力」として観察するのに有効である。4年間の研究の3年目である平成26年度は、10名の学生が中期・長期の留学から帰国した後であり、4名の学生が今後の中期・長期の留学を計画している直前の7月に、初年度と同じように、(1)から(4)のように、研究参与者24名からデータ採取を行った。参与者25名のうち1名は、連絡が取れずデータが採取できなかった。(1)参与者に個別に設備のある研究室に来て英語説明文を書いてもらい、書き終わった直後に書いている時の様子を録画したビデオテープを見ながら、書いている最中に何を考えていたかを逐次話してもらい、ICレコーダーに録音した。採取したデータは、直後に転記した。(2)国語作文も似たような題で書いてもらい方略について聞いた。日英の作文の題はランダムに毎年違うものがあたるようにした。(3)標準英語力測定テストを用いて、一般的な英語力も測定した。(4)上記量的データとは別に、ケーススタディの手法を使って被験者に個別にインタビューを行い、日英語で「書く」ことについての知識や心象モデル、現在までの学習経験や、英語一般や英作文に対する自信や動機付けなどについても調査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目となる平成24年度までは25名いた研究参与者のうち、1名と連絡が取れず、データが採取できなかった。しかし、残りの24名の参与者からは量的データ(参与者の英作文と日本語作文と、それらの作文の専門家による評価、日英作文のミクロ的方略に関するプロトコールデータとそれを転記したもの、英語標準テストによる参与者の一般英語力)と質的データ(日本語で「書く」ことについての知識や心象モデル、過去1年間の学習経験や英語一般や英作文を書く自信や動機づけなどについてのインタビューデータと、そのデータを転記したもの)を、当初の予定通り採取できた。しかし、合計24名分の日英作文方略に関するプロトコールデータの分類は、膨大な時間を要するため、現在の時点ではまだ完結していない。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度は以下のように研究を進める予定である。 (1) 被験者4年次でのデータ採取: 多くの学生が就職活動を終える4年生7月に、過去3年間と同じように量的データと質的データを採取し、過去3年間と同じ方法で処理する。 (2) 3年半のプロフィール作成とインタビュー(平成27年8月-12月):被験者からの全てのデータ採取が、(1)で終了するので、1年生の時から複数回にわたって採取したデータを整理して、被験者それぞれの量的データの変化のプロフィールを作る。その後、平成27年12月頃に、被験者ひとりひとりにこのプロフィールを見せてインタビューする。具体的には、それぞれの変数について、「3年半で変化したと思うか、又それはなぜか」をまず問い、その後、実際の変化の様子を見せて、「なぜこのように変化したと思うか」とインタビューする。さらに、社会・文化的背景を含めた変化の背景を、被験者自身の言葉で語ってもらう。 (3) 4年間に採取したデータのまとめと分析(平成28年1月-3月):平成24年から27年度に採取した4年分の量的データをコンピュータに入力し、対象変数の3年半にわたる変化と相互の関係を統計法を交えて分析する。又、インタビューによって得られた、被験者自身の言葉による「3年半の日英ライティング行動の変化の原因や社会文化的背景」を「当事者データによる説明」として使いながら、得られた全データを、ダイナミックシステム理論の観点から分析する。 (4) 研究成果を全米応用言語学会(American Association of Applied Linguistics)の年次総会などの国際学会で発表すると共に、論文としてまとめる。
|