研究課題/領域番号 |
24520672
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
沖原 勝昭 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (10094062)
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キーワード | CLIL / 英語教育政策 / 東南アジア地域 / 二言語教育 / 早期英語教育 / 教科学習言語 / 第二言語学習 / 国際情報交換 |
研究概要 |
東南アジア地域2カ国(シンガポールとインドネシア)を訪問し,CLILに関する資料・情報を収集し,一昨年以降入手したデータに基づいて,中間報告論文を執筆した。 シンガポールでは,唯一の教員養成大学であるNational Institute of Educationを訪問, 研究協力者Willy Renandya教授と面談し,東南アジア地域の言語教育の現状,CLILの動向についての情報を得た。インドネシアでは,初等・中等学校3校,大学2校を訪問した。初等中等学校では,2言語のカリキュラム,生徒の背景,教育上の諸問題について資料と情報を入手した。教科学習と英語学習を統合したCLILがそれぞれ実践されているとの印象を受けた。さらに,ジャカルタ市内のAtma Jaya Catholic Universityを訪問し,Nilawati Hadisantosa教授と面会した。CLILの現状として,小・中等学校における英語による数学・理科の授業の進捗状況について,話しを伺った。この席で,インドネシア文部省は,今年になって,CLILの全国展開には無理があると判断し,推進政策を見直すことを決定したとの情報を初めて確認した。 過去1年半の間に収集した資料と情報をもとに,中間報告として論文 “The Background and Basic Assumptions of CLIL”「CLILの背景と基本理念」(『京都ノートルダム女子大学研究紀要』 第44号,2014)をまとめた。内容としては,CLILの起源,定義(教育形態・方法),世界的に普及している理由,東南アジア地域(主として,インドネシアとタイ)におけるこれまでの成果,限界,問題点を記述した。関係国の研究者と情報交換することも念頭に入れて,英文でまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去2年間の調査活動により,2年目の研究計画は概ね達成できたと考えている。しかしながら,その過程において,当初立てた計画は種々の事情により変更せざるを得なかった。平成25年度当初,東南アジア地域4カ国(シンガポール,インドネシア,タイ,マレーシア)を2回に分けて訪問し,CLILに関する資料・情報を収集する予定であったが,政情不安,政策の変更,研究協力者側の不都合等の事情を考慮して,シンガポールとインドネシアの2カ国に絞って訪問した。この2か国については,予定していた教育研究機関すべてを訪問し,関係する資料・情報を収集することができた。ただし,インドネシア文部省によるCLIL推進政策の転換という急な事態が生じたので,これまでの調査研究方針について軌道修正しなければならなくなった。タイについては,年度後半に予定していた渡航は,首都バンコクでの反政府デモによる政情不安があり,研究協力者もバンコクでのデモに参加していた等の事情もあって,現地に赴いての調査は見合わせざるを得なかった。また,マレーシアについては,研究協力者が定年退職し,家庭的な諸事情を抱えていることが判明したために,渡航による現地調査は見合わせた。そのかわり,一昨年の訪問時に入手した情報やEメール等で受信した資料・文献を調べている。特に,文部省が昨年発表した「教育変革13年計画」(Malaysia Education Blueprint 2013-2025)と英語教育政策は非常に参考になっている。現在新たな研究協力者を得るべく努力しているが,もう少し時間的な余裕が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
(平成 26年度以降) (1) 調査対象国であるインドネシア,タイ,マレーシア,およびシンガポールに渡航し,これまで収集した文献の読解と情報に基づき,調査項目を精査してCLILについての各国の施策を追跡する。その渡航に合わせて,東南アジア地域で活発に活動しているBritish Councilの援助も仰ぐ。インドネシアについては,政策続行を前提として予定していた調査項目を見直すとともに,今後は,この政策を変更させるに至った諸要因の解明に当てたいと考えている。タイについては,一昨年訪問した時に入手した文書とEメールによる情報交換を中心にCLILのその後を追跡しており,特にEnglish Programに必要な教員確保に関わる諸問題に焦点を当ててさらに調査する。マレーシアについては「教育変革13年計画」における英語教育施策を中心に,CLILに関わる教育的動向を探る。 (2) CLILについての研修会への参加と学会発表。今年8月のJACET Summer SeminarではCLILをテーマとした研修会が予定されているので,これに参加して日本への示唆や教訓を検討するための機会とする。また,全国規模の学会において発表し,紀要論文を投稿する。 (3) タイの研究協力者が12月に来日する予定であり,小学校~高校の英語教育現場とも連絡をとって,タイにおけるCLIL実践の現状を報告していただき,日本のSuper Science High School校などでの理数科目の英語による授業と比較検討する機会を持つ予定である。 なお,インドネシアにおけるCLIL推進政策の見直し,タイにおける政情不安による教育現場の混乱などにより,当初計画していた調査内容の遅延と見直しが迫られているので,もう1年研究期間の延長を希望している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度当初,東南アジア地域4カ国(シンガポール,インドネシア,タイ,マレーシア)を2回に分けて訪問し,CLILに関する資料・情報を収集する予定であったが,政情不安,政策の変更,研究協力者側の不都合等の事情により,シンガポールとインドネシアの2カ国だけに絞ったため。 今年度は東南アジア4カ国を訪問,国内での学会と研修会に出席し,外国の研究協力者1人の国内費用を補助する予定である。以下の費目を計上する。 外国旅費 72万円,国内旅費 20万円,研究者招聘補助 15万円,謝金 10万円,図書 10万円,印刷費・消耗等 15万円,計142万円.
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