研究課題/領域番号 |
24520672
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
沖原 勝昭 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (10094062)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CLIL(教科と言語の統合学習) / 英語教育 / 東南アジア / 言語教育政策 / 英語カリキュラム |
研究実績の概要 |
外国での研究活動として,東南アジア地域4カ国(タイ,インドネシア,シンガポール,マレーシア)を訪問し,国際学会への参加,種々の教育機関の視察を行なうことによって,英語CLILに関する資料・情報を収集した。国内では,大学英語教育学会主催のCLILセミナーへの参加,第40回全国英語教育学会研究大会での口頭発表,タイの研究協力者の招聘と研究交流,研究論文の執筆等の活動を行った。 まず,海外での活動として,第35回Thailand TESOL国際学会(2015年1月)に出席し,東南アジア諸国からの研究者と交流を通して英語CLIL関係の情報を収集した。引き続き2月に移動したインドネシアでは,British Councilほか1大学,私立学校2校を訪問し,情報の交換を行った。同年3月,シンガポールではRegional Language Centre第50回国際学会に参加し,英語CLIL関係の情報交換を行うとともに,インドネシア,マレーシアの英語CLIL関係の情報収集を行った。その後移動したマレーシアでは,British Councilとマレー系の大学を訪問し,言語教育・英語CLILの実情についての研究情報を交換した。今回の渡航で,インドネシアにおける英語CLIL中止の背景とマレーシアにおける授業用言語の問題について,最新の情報を得ることができたのは大きな収穫であった。 国内における活動として,2014年8月の口頭発表「英語CLILの普及とその教育的影響」では,東南アジア諸国における英語CLIL実施の現状と日本の英語教育に対する意味合いを論じた。今年度執筆した論文「CLIL導入の目的と実施形態」(『京都ノートルダム女子大学研究紀要』)では,前年のCLIL研修や口頭発表の内容を踏まえて,CLILの定義,全世界的な普及状況,日本の英語教育に与える教訓や示唆を論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去3年間,東南アジア地域における英語CLILに関する調査研究を実施してきたが,3年目の調査活動により,研究計画は概ね達成できたと考えている。ただし,その過程において,当初立てた計画は種々の事情により変更せざるを得なくなった。そのため,研究期間の延長を承認していただいた経緯がある。具体的には,以下の事情により,研究内容で未完のものが生じ,研究費の未使用額が発生した。(1) インドネシアでは2年前にCLIL推進政策が見直されたため,その背景や原因を究明する必要が出てきた。特に,2013年に発表された新カリキュラムの存在が政策変更の背後の原因であることが判明しているので,今後この点を中心に調査する必要が出てきた。(2)タイにおけるEnglish Program実施状況の調査が,政情不安(大規模デモによる教育現場の混乱)により延期されている。研究協力者からのその後の情報では,CLIL教員の確保が依然として未解決であるとのことで,今後はこの点に絞ってCLIL実施状況の把握に努める予定である。(3) マレーシアについては,当初予定していた研究協力者の個人的な都合により,CLIL関連情報の入手が極めて困難になった。今回のマレーシア訪問の成果として,研究協力者と教育機関(上掲Universiti Sain Islam Malaysiaほか)とのパイプができたので,これらを通して,「教育変革13年計画」(Malaysia Education Blueprint 2013-2025)を含む最新の情報を入手していく予定である。 以上,3年目の後半(平成27年1~3月)に行なった海外の学会出席と学校訪問により,新研究協力者の確保等による情報入手の道が開けてきたので,当初立てた研究計画は,承認していただいた4年目(平成27年度)に達成できる見通しがついている。
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今後の研究の推進方策 |
(平成 27年度) (1) 調査対象国であるインドネシア,タイ,マレーシア,およびシンガポールに渡航し,これまで収集した文献の読解と情報に基づき,調査項目を精査してCLILについての各国の施策と実施状況についての最終的なまとめを試みる。今年度の渡航はThailand TESOL,RELCなどの学会出席を主たる目的とする。インドネシアについては,CLIL推進政策(=中等学校における理系科目の授業用言語を英語とする政策)を変更させるに至った諸要因の解明,特に「2013カリキュラム」の成立過程,内容分析および教育現場に与えている影響に焦点を当てる。タイについては,昨年研究協力者が来訪した際に提供していただいたEnglish Program実施に関する資料を精査し,教科学習と英語学習の効果について分析する予定である。それとともにEnglish Program実施に必要な教員確保の現状に焦点を当ててさらに調査する。マレーシアについては「教育変革13年計画」の枠組みの中で,義務教育における授業用言語を英語からマレー語に切り替えた施策の原因と影響に焦点を当てる。 (2) 英語CLILについての学会参加と発表。主として東南アジア諸国における英語CLILの実施状況を踏まえて,日本の英語教育への示唆や教訓を考察する内容とする。この考察においては,CLILの本質・定義の明確化,日本の教育制度の中でのCLILの利点,CLIL実施と日本人としてのアイデンティティの関係,CLIL導入の範囲と規模,CLIL担当教員の確保などのテーマを含む予定である。これまでに発表した2編の論文も組み入れたものとする。全国規模の学会において発表し,紀要論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 以下の理由により,研究計画の変更を余儀なくされたり,延期せざるを得なくなった。 (1) インドネシアでは2年前にCLIL推進政策が見直されたため,その背景や原因を究明する必要が出てきた。(2) タイにおけるEnglish Program実施状況の調査が,政情不安(大規模デモによる教育現場の混乱)により延期されている。
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次年度使用額の使用計画 |
計画 次年度には,未調査となっている項目を調査するためと関係学会に参加するために,未使用額は,主として,インドネシア,タイ,シンガポールのいずれかに渡航するための旅費に充てる予定である。
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