研究課題/領域番号 |
24520673
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都医療科学大学 |
研究代表者 |
藤枝 美穂 京都医療科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20328173)
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研究分担者 |
鈴木 広子 東海大学, 付置研究所, 教授 (50191789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ESP / 医療英語 / 放射線科学 / 診療放射線技師 / コーパス / ジャンル分析 |
研究概要 |
本研究の目的は,放射線科学分野の専門度が異なる4ジャンルのコーパスを構築し,専門英語を使う学習者の成長に応じた段階的な語彙リストを作成することである。本年度は,英語圏の高校教科書,大学入門専門書,学術論文の対象テキストを選定してデータ収集を開始し,ふたつの予備分析を行った。 まず,当該分野のトップジャーナルであるRadiologyの原著論文282本(約123万語)のコーパスを利用して,BNC語彙リストのカバー率,282論文を13分類した場合の語の頻度と分布,Wang他(2008)によるMedical Academic Word Listとの比較,および単語連鎖の出現状況を調べた。その結果,頻度と分布度によりこの分野に特徴的な語と単語連鎖の存在が明らかになった。 さらに,専門教科書 Squire’s Fundamentals of Radiologyの本文(約10万語)をコーパス化し,BNC語彙リストのカバー率,語の頻度と分布,単語連鎖,さらに対照コーパスをBROWNコーパスにした場合の特徴語の統計指標を調査し,研究論文の場合と比較することにより,二つのジャンル間の語彙の違いを分析した。カバー率の調査からSquire’sのほうがRadiologyよりも語彙の要求度が低く,研究論文を読むようになる前のリーディング教材として,専門分野の入門教科書は,学習者に対する語彙の負担がより少ないことを示唆した。分布・頻度調査では,上位に一般的には低頻度レベルの語も混じっており,汎用語彙リストを基準にした学習ではこの教科書を読むための語彙を効率よく習得できない可能性があることがわかった。単語連鎖については,撮影技術や画像に言及した表現が上位に多くみられ,研究論文のそれとは異なっていた。統計指標を使って加えたいくつかの語を含め,299語からなる暫定的な語彙リストを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基盤となる学術論文コーパス(Radiology, American Journal of Rentogenology, Medical Physics等に掲載された研究論文)および専門教科書コーパス(Squire's Fundamentals of Radiology, Radiobiology for Radiologist, Essentials of Radiologic Science等の基本的な専門教科書の本文)のデータ収集が着実に進んでいる。特に,最も専門性が高い学術論文ジャンルのテキストデータは,現役診療放射線技師からのアンケートをもとにジャーナルを特定することができたので,現場の英語ニーズを反映できることが期待される。 予備調査によって,学術論文と教科書では分野が同じでも語彙使用が異なり,一般英語~専門教科書~研究論文の順に基本1000語レベルのカバー率が下がり,専門度が上がるに従って低頻度語の割合が増えることが明らかになった。また,G-scoreによる統計手法を補完的に取り入れることで,頻度と分布度だけでは拾いきれない当該分野の特徴語がある程度は拾い出せることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画から少し遅れているが,二年目前期には「肺疾患」に絞って4つのジャンル(高校レベルの教科書,一般向け医療情報,大学専門基礎教科書,研究論文)の小規模コーパス分析を行う。さらに,後期の「医学英語」授業において「肺疾患」を取扱い,学生のライティングデータを用いて専門語の使用状況をプロトコル分析しコーパスのデータと比較することで,量的研究と質的研究の融合を試みる。 それと並行して,各サブコーパスの拡充をバランスを考えながら進める。特に一般向け医療情報についてはウェブサイト上からのデータ収集となるが,サイト選択根拠を明確にできるようにすることと,研究論文データに匹敵する量を収集できるかが課題となる。 二年目終了時までには暫定的でも4レベルの語彙リストを完成させ,それぞれの関連性が分析できるところまで研究を進めたい。そして最終年度である3年目には,そのリストを活用して授業実践を行うと共に,教材開発やテスト開発など,リストの実際的な活用方法を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
7月の医学英語教育学会および12月にニュージーランドで開催される語彙習得に関する学会に口頭発表することが内定しているほか,9月のポルトガルでのCALL/ESP学会に参加予定である(国内旅費・海外旅費)。謝金としては,英語論文執筆にあたっての英文校閲者,内容に関する助言を依頼する放射線科学やコーパス分野の専門家,コーパス拡充のためのアルバイトに対する支払が生じる予定である。また,昨年に引き続き,研究分担者と代表者が打ち合わせを行うための国内旅費が必要となる。コーパス拡充に必要な書籍および電子書籍の買い足しのための物品費も見込んでいる。
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