本研究は、日本人英語学習者による自動詞(非能格動詞及び非対格動詞)の項構造の習得に焦点をあて、①その習得の過程を発達段階ごとに実証的に明らかにし、②発達段階別に何ができるようになるのかをCEFRの評価のツールである「能力記述文」の形で明示的に示し、第二言語習得の成果が学習者の目標設定・自己評価に有益に活用されることを目指すものである。 平成24年度は、まず学習者の英語レベルを測定し、その後基礎的英文法能力の調査を行い、能力記述文の作成に向けて、文法事項の項目別調査を行った。また本実験に向けてパイロットスタディを行った。 平成25年度は、これを基に実験のテスト文や使用語彙の選定、調整を行い本実験を実施した。この結果、これまでの先行研究で示された習得段階を確認した。さらに同じ非対格動詞でも語彙によって習得に違いが見られる事が分かった。特に自発性を示す意味を持つ語彙については、学習者によく見られる受動文の誤用が少ない事が明らかになった。これまでの統語的観点からの分析ではなく認知的観点からの分析によって新たな知見が得られたと考える。そして、これらの結果と、先に実施した文法項目の調査を基に、得られたデータを「潜在ランク」理論による統計分析を用いて行い、「能力記述文」の作成を行った。その結果、習得のレベルには段階があり、本研究のテーマである項構造の習得にも、指導の提示順序など考慮すべきである事が分かった。 平成26年度には作成した「能力記述文」を基に、教授項目の順序、時期など指導上の活用を行った。また同時に学生による自己評価や、次回の目標設定へ向けた活用の指導を試みた。そしてこれまでの研究成果を踏まえ、考察を行い、総括を行った。
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