研究課題/領域番号 |
24520678
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉澤 清美 関西大学, 外国語学部, 教授 (80210665)
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キーワード | L2 reading / 多読 / 統語的能力 / Reading fluency / Test equating |
研究概要 |
(1)平成25年度の研究目的は、英語での多読を継続することにより英語の統語能力はどのような時系列的変化を見せるかを質的なアプローチを用いて検証することであった。多読授業ではエジンバラ大学多読プロジェクトが開発したプレイスメント・プログレステスト(EPERテスト)を実施し、その結果に基づいて学習者のプレイスメントや学習の伸びを測定する。1年間の多読プログラムで多読を行った大学生英語学習者526人分のEPERテスト結果を分析した。EPERテストは多読授業開始直後、春学期終了前、秋学期終了前に実施された。EPERテストは141項目からなるクローズテストであり、これらの項目をBachman (1985) の方法に基づき、4つのタイプに分類した。タイプ1の項目に正答するためには、学習者は統語的知識が必要であり、空所がある節の中の情報だけを用いて正答できる。タイプ1から4に進むにしたがって、正答を得るために受験者が使うコンテキストは、文からテキストへ、テキストからテキスト外の知識へと広がっていく。データはラッシュ分析を行い、3回のデータ収集時の学習者能力をロジットで表し、その結果を線形階層モデルを使い、タイプ毎に分析した。また、多読開始時期に統語的能力が低い学習者グループと高い学習者グループでの伸びの違いについても分析を行った。上述のタイプ1の項目に正答するために学習者は統語的知識が必要であり、分析の結果、タイプ1項目の切片と傾きは中程度の負の相関が見られた。 (2)多読は英語学習者の読解力並びに読む速さ(fluency)の発達を促進するのかどうかを377名の日本人英語学習者を対象に検証した。全員1年間の英語リーデイングプログラムにいる大学生であり、実験群(多読クラス)、統制群(通常のリーデイングクラス)に分けられた。 (3)平成26年度の研究に必要となる統語的能力診断テストを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究目的は、英語での多読を継続することにより英語の統語力はどのような時系列的変化を見せるかを質的なアプローチをとり検証することであった。現在、収集したデータを各項目のタイプ毎に線形階層モデルを使い分析を行っている。今後、英語の統語力発達が多読と関係があると考えられる要因(読書量と性別)とどのような関係を持つのかについて更なる分析を進める必要がある。 また、多読開始時期に統語的能力が低い学習者グループと高い学習者グループでの伸びの違いについても、読書量、性別とどのように関係するのかに関して分析を進める必要がある。 更に、英語の多読が英語での読解力とreading fluencyの発達をどのように促進するのかについての検証はデータ収集が完了したところであり、今後、読解力とreading fluencyの時系列的な発達並びにそれらが読書量、性別とどのように関係しているのかについてデータ分析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の目的は、学習者の統語的能力の発達は、英語で読むことに対する態度、性別などの学習者要因、一年間の読書量とどのように関係しているのかを検証することである。また、多読クラス(実験グループ)、多読を行わない通常リーデイングクラス(統制群)との比較も行う。更に、実験グループに関しては、潜在的クラス分析(Muthen & Muthen, 1998-2007)を用い、どのような学習者が統語的能力を発達させるのかを検証する。 学習者の統語的能力測定のためのテストなどが必要となり、日本人英語学習者のための文法診断テスト、EDit Grammar(Koizumi 他、2011)が考えられるが、名詞句の内部構造に特化したものであるため、EDit Grammarの項目作成の方針を参考にし、名詞句以外の項目を含めたテストを新たに作成する必要があった。平成25年度に統語的能力診断テストを新たに開発、パイロットテスト実施、最終修正を終えた。平成26年度4月開始のデータ収集時から新規に開発した統語的能力診断テストを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年の本研究開始時より研究に参加、多読を実施している研究協力者の一人が平成25年4月から新たに着任された大学には多読用の図書が乏しく、急遽予算に計上していない多読用図書を購入する必要が生じた。直接経費の削減を行ったが、多読用図書購入には11万円ほど不足分が生じたため、前倒し支払請求(20万円)を行った。前倒し支払請求の請求額が10万円単位であったため、差額9万円弱が生じた。 消耗品(ストップウォッチ、文具)、国内旅費(採点他の作業のための科研会議出席の旅費、日本言語テスト学会年次大会成果発表の旅費)、国外旅費(イギリス応用言語学学会での成果発表旅費)、人件費・謝金(実験補助、論文校閲)、その他(データ入力委託、会議費、通信費)
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