研究課題/領域番号 |
24520681
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
山田 一美 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (90435305)
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研究分担者 |
宮本 陽一 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (50301271)
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キーワード | 第二言語習得 / 項削除 / 名詞句削除 / 非顕在的な要素 / 空主語 / 空目的語 / pro / argument |
研究概要 |
本研究の2年目となる25年度は、前半に本実験の方法を決定し、実験アイテムの作成を行った。後半は英語を母語とする日本語学習者(E-JFL)および日本人英語学習者(J-EFL)からデータを収集した。また、次年度のドイツ人学習者を対象とした実験準備を開始した。 本実験の方法については、絵ではなく写真や動画を使用した方法で実験を実施していくことになった。理由としては、さまざまな実験文の文脈設定(状況設定)をする際に対応がより可能となること、また、文脈をより分かりやすく被験者に提示できることが挙げられる。本実験の前に実施するpre-testの実験文も決定され、strict読みの空主語、空目的語を含む文、および本研究とは関係のない文から構成されるtestとした。 本実験では、以下の4つを先行詞とする空要素の解釈を検証する:(1)自分(2)数量詞(目的語)(3)数量詞(主語+目的語)(4)お互い。空主語の先行詞は(1)のみとし、空目的語の解釈を中心に実験を進めていくこととした。具体的な実験方法は、スクリーンに状況設定のPPTスライド(写真や動画を挿入)を映し、続いてその状況を説明する実験文が読まれる。被験者はその実験文が正しく状況を説明しているか判断する。実験文の数は、空要素がstrict読み・sloppy読みか、空要素を含む文が肯定文・否定文か、その語順が倒置かどうか、空要素の先行詞を含む文の主語が単数・複数かなどの場合を含む計52である。 E-JFL学習者、J-EFL学習者を対象とした実験結果は、特に中上級レベルにおいて、J-EFLのL2文法の空要素は項削除の結果であるが、E-JFLのL2文法ではproであることが明らかになった。このことは、中上級レベルでもL2の非顕在的な要素決定にL1のphi素性の有無が関与していることを示しており、故に、誤った素性の具現化がL2発達過程を通してのものであることを示唆しているといえるのではないか、と結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の通り、今年度は研究方法を決定でき、さらに日本語を学習している英語母語話者と日本人英語学習者からデータを収集し、結果の分析まで進めることができた。また、次年度に実施するドイツ人学習者およびスペイン人学習者を対象とした実験実施に向けて、実験文のドイツ語・スペイン語翻訳作業、録音作業を依頼できる国内外のドイツ語・スペイン語母語話者(教員、研究者等)に作業依頼をし、準備をすすめている。 さらに、理論的には、項削除の実験結果をさらに検証する追加実験の際に用いる統語現象選択を目的に、phi素性の有無が関与していると思われる他の統語現象の整理を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ人日本語・英語・スペイン語学習者を対象とした実験を実施し、データを収集していく。ドイツ語ではimplicit objectを含む動詞(kick, eat, cleanなど)が存在するため、学習者のL2文法でそれがどのような影響をおよぼすのかということも含めて検証をしていきたい。また、実験準備ができ次第、スペイン人学習者からもデータを収集していく予定である。また、項削除の研究成果について更なる検証を行うため、現ミニマリストプログラムにおいて他の統語現象をphi素性の観点から整理する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度への繰越金額は代表者が303,056円、分担者が71,327円である。代表者の繰越金は、40万円の前倒申請を行ったものの一部である。ベルリンの研究所や大学でドイツ人学習者の確保が見込まれたため、ドイツ人を対象とした実験準備と実験実施のための渡独費用のために前倒し申請を行ったが、実験準備の段階で実験アイテムの精緻化に想定していた以上に時間がかかったことから、実験は次年度実施となり30万円も繰り越されることになった。 未使用額は、翌年度分として請求した助成金とあわせて、主に実験アイテム作成準備、実験データ収集、研究成果発表のための旅費、実験被験者への謝礼、書籍などに使用予定である。
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