研究実績の概要 |
本研究の目的は第二言語学習者の言語知識が学習者の熟達度に応じ、どのような状態であり、特色を持つのか解明すること、さらには中間言語において母語の影響が反映されやすい領域と発達上の誤りが出現しやすい領域とを明らかにすることにある。本研究プロジェクトでは以下の2種類の研究を実施した。 まず日本語の統語的複合動詞の習得に焦点をあてて、調査分析を実施した。今年度は昨年まで実施してきた韓国語母語話者を被験者とする調査から、さらに対象を拡げて中国語母語話者を対象に実験調査を行った。福岡大学国際センターやセンター所属講師の協力を得て、中国人留学生48名を対象に統語的複合動詞の習得に関する調査を実施した。中国語は韓国語と異なり、統語的複合動詞があるとされているが、調査結果では韓国語母語話者と中国語母語話者との間で明確なパフォーマンスの違いが観察された。具体的には韓国語母語話者に母語の影響と思われる現象が多数観察されたのに対し、中国語母語話者にはほとんど見られなかった。 次に日本語を母語とする中級英語学習者に対し、3種類の英語の複数形形態素「‐s」の使用と産出についての調査を実施した。3つのタイプとは:(1)語彙・統語レベルで「可算」(cups, chairs, etc.)、(2)語彙・統語レベルで「不可算」(water, sand, etc.)、(3)語彙レベルで「可算」、統語レベルで「不可算」(furniture, jewelry, etc.)である。その結果、学習者は語彙・統語レベルで「可算」名詞に対しては正しく複数形形態素を用い、語彙・統語レベルで「不可算」の名詞に対しては複数形は用いない傾向が顕著に表れた。しかし、語彙レベルで「可算」、統語レベルで「不可算」の名詞に対してはすべての中級レベルの学習者が文法性判断テストと産出テストの両方において複数形を過剰使用することが明らかになった。
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