英語教師の授業力量に関する研究が今後急務になるといわれている。理由は、グローバル化と学習者の多様化に対応するために英語教育のあり方も変容を迫られ、同時に教師教育(養成・研修)も方向性の転換を求められるからである。 本研究は、授業研究と教師教育に関する教育工学等の研究成果を踏まえ、英語教師の抱える現状課題について考慮しながら、まず①常に何らかの意思決定を求められる授業時の英語教師の信念、認知(知識)、判断等の特徴を実証的に解明し、次に②その知見を授業改善や授業力量の向上をめざす英語教師を支援しうる教師教育(養成と研修)のプログラムに新たな視点を提供することを目的とした。本研究では、実際の多くの授業を参与観察したり、授業後に授業者におこなった聞き取り調査や、授業研究協議会での教師間の「協議」に参加する等のフィールド・ワークを行った。その成果として、多くの教師が主に3つの教室内情報をもとに授業実践にかかわる多くの意志決定を行いしかもそこには一定のパターンがあることがわかり、各教師のライフステージにおける授業力量の特徴(長所と短所)の記述モデルを作成することができた。 多くの英語教師に、例えば「授業中に生徒が理解できないままにある言語活動(ペアワーク)を指示され、皆がざわざわし始めた時どうしますか」とたずねると、「場合によります」と回答がかえってくることが多い。学級経営の研究者のドイル(1979)も指摘したが、 授業は大変複雑な営みで、①多次元性(多様な事態が)、②同時性(同時におこる)、③即時性(教師は瞬時の対応を求められ)、④予測不可能性(授業時はプラン通りにはいかない出来事が生じる)、⑤連続性(前の授業の出来事や判断が先の授業にも影響を及ぼす)の5つの特性を持つ複雑な事象であることが改めて確認できた。従って今後の教師には様々な問題解決能力とそれを育むプログラムの設計が必要となる。
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