研究最終年度は、主として前年度に行った小学校3~6年生の音韻認識調査の結果を、これまでの理論研究と調査の結果と関係づけながら考察して成果を公表した。音韻認識調査の結果からは、調査対象となった小学生がどの学年でも、英語の音韻認識技能を測るタスクをある程度行えることが分かった。3種類すべての音韻認識テストにおいて、「学年が上がる」ほど、また 「学校外での英語学習経験がある」ほど得点が上がる傾向が明らかになった。しかしながら、その得点の伸びは、これまでの研究で明らかにした「5年生対象の音韻認識指導後の得点」には達していなかった。これは、音韻認識に焦点を当てた指導の有効性を示唆するものと主張できる。またどの学年の児童にとっても、CVC語の語頭のCの分析や、CV部分のCの違いに基づいて単語を区別するタスクの方が、語尾のCの分析やVC部分のCの違いを認識するタスクよりも困難であった。音韻操作タスクにおけるターゲット音素の単語内の位置による困難度の違いについては、英語を母語とする子どもを対象にした研究から、C1よりもC2の認識や操作の方が困難という結果がある。これは音節内単位としてのオンセット・ライムの区切り(C+VC)をもつ英語の音韻認識発達においてVC(脚韻)の認識が重要であることから、Cを後に続くV(C)と切り離して認識できるようになることに関係すると考えられる。一方、基本的音韻単位をモーラ(CV)とする日本語を母語とする小学生は、特に6年生までの段階で、CVのまとまりをさらにCとVに区切り音素単位で分析する音韻認識(音素認識)を、英語の読み技能習得に必要なレベルまで自然に高めることは期待しづらいと推察した。これらの結果から、「適切な時期に」「適切な方法」で焦点化した音韻認識指導を行うことが、初期読みを始めとする英語リテラシー習得に向けたレディネスとなることが明らかになった。
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