研究課題/領域番号 |
24520705
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
川口 恵子 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (80369371)
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研究分担者 |
伊東 田恵 豊田工業大学, 工学部, 准教授 (40319372)
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キーワード | 第1人称代名詞 / 研究論文 / コーバス / ジャンル / テキスト分析 / ライティング / ESP / 英語教育 |
研究概要 |
前年度に引き続き、英語教育分野の学術誌2誌(TESOL Quarterly, JACET Journal)の、1990、2000、2010年前後の3年代の論文における、著者に言及する第1人称代名詞の使用頻度と出現箇所等を調べた。その結果、英語母語話者の論文においては、過去20年間で、第1人称代名詞の使用頻度が増加していることがわかった。結果は論文化し、2013ALAK International Conference (韓国、プサン)にて発表した。 一方、日本人による論文では、直近の年代で、TESOL Quarterlyの英語母語話者による論文と比べ、第1人称代名詞の使用頻度が低かった。そこで、2010年の時点での日本人の論文著者の第1人称代名詞使用では、英語母語話者との差があることが示唆された。 さらに、今年度、工学系学術誌(Jouranl of Applied Physics)(21編×3年代)にて同様の分析を行った。使用頻度数の比較では、TESOL Quarterly よりJouranl of Applied Physicsにおいての方が、1000語あたりの第1人称代名詞の使用頻度が高いことがわかった。一方、年代の比較では、工学系論文では、使用頻度はあまり変化していないことがわかった。これらの結果は、「理工系論文では第1人称代名詞の使用頻度は低いであろう」という英語教員の一般的な認識と異なるものであった。分析結果は論文にまとめ、AILA2014(オーストラリア)で発表予定である。 以上の結果に基づき、「日本人の英語教員の学術論文における第1人称代名詞の使用についての認識と実際、ライティング指導時の考え」を調査するため、アンケートを作成、実施した。これらの研究結果は、ライティング基礎を異なる専攻の学生に指導する英語教員にとって有用な情報となるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した計画の大筋において、研究着手ができており、研究の目的((i)英語教育学・工学系の学術論文で使用される著者を示す第1人称代名詞の使用頻度、出現箇所などを比較し、ii)その分析結果をうけて英語教員にアンケートを行い、英語教員の論文における第1人称代名詞の使用についての認識を明らかにする)を達成する上で、研究成果がだせるように進んでいる。そこで、「おおむね順調に進展している」と評価した。 アンケート調査にもすでに着手しているので、その点では、当初の計画以上に進展している。しかし、部分的な遅れもある。当該年度では、工学系国際誌2誌を分析する予定であったが、現在分析が終わったのは、1誌である。1誌のみとなった理由は、20年前の古い年代の論文はJACET Journal では、紙媒体テキスト情報のみ、工学系論文では、テキスト情報が付与がされていない画像データのみしかなく、テキスト情報を付与した電子データへのコーパス作成は、煩雑で非常に時間がかかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に行った工学系学術誌(Journal of Applied Physics) の3年代における論文での第一人称代名詞の使用頻度、出現箇所等の分析結果をAILA2014で発表する。 また、最終年度に行う予定の英語教員に対する「論文における第1人称の使用に関する認識と実際」についてのアンケート調査結果をまとめ、これまでの研究結果と合わせて考察し、学会で発表する。 昨年度の計画にあった工学系学術誌2誌の分析で、遅れている1誌については、これまでの分析結果を考慮し、時間的制約から、次のように計画を変更する。当該年度に調査した工学系学術誌では、予想に反し、過去20年で、第1人称代名詞の使用頻度に大きな差が見られなかった。そこで、代名詞使用頻度の時代による変遷に焦点をあて、調査する年代を2つの年代、直近および、20年前の2年代に絞り、コーパスを作成し、分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、コーパス作成において一部遅れがあったため、それにかかわる補助作業の人件費などの費用の使用が減ったためである。また、当初、文献を入手するための購入費用を考えていたが、知人に借りたり、図書館を通じて電子データが無料で入手可能となったため、次年度使用額が生じた。 翌年度は、遠隔地(オーストラリア)での国際学会での発表を予定しているので、主に旅費の支出となる。また、コーパス作成のための補助作業に関わる若干の人件費、コーパス分析により生じる物品費を予定している。
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