研究実績の概要 |
最終年度では、昨年度行なった工学系(Journal of Applied Physics) および英語教育学系(TESOL Quarterly)学術論文中の著者を指す第1人称代名詞の出現頻度分析に加え、更に詳細なディスコース分析を行い、その成果を2014 AILA World Congress (オーストリア)で発表した。この場合のディスコース分析とは、著者を指す代名詞が読者との関係性において、どのようなディスコースの目的で使用されているかを原文にあたり、文脈より判断、確定するものである。その結果、二つの異なる学術分野では、代名詞は主に研究者としての役割の重要性、研究方法や結果の提示や正当性などを示すために使用されていたが、差異もあり、英語教育系論文の著者は、読者との関係性を構築することを意識した代名詞の使い方をしていたが、工学系ではそのような使い方は見られなかった。さらに、頻度分析より「工学系論文でのほうが著者を指す代名詞の使用頻度(1000語毎)が高い」ことがわかり、あわせて、学会で報告した。 さらに、最終年度では、昨年度末より実施しし始めた大学英語教員(日本人)に対する「英語論文での著者(自分)に言及する代名詞の使い方」についてのアンケート調査の結果を集計し、分析を行なった。この結果に基づき、英語教育分野の学術誌2誌(TESOL Quarterly, JACET Journal)の英語母語話者と日本人研究者の代名詞の使用がなぜ異なるのかを考察した。以上を論文にまとめ、KATE Journal(2015年第29号)で発表した。この研究成果は日本の大学で英語論文指導を行なう日本人英語教員に対して非常に有用な情報を提供するものである。 論文の書かれた年代(20年前と直近)がどのように代名詞の使用頻度に影響を及ぼしたかの総括結果は2015年11月の学会で発表する。
|