研究課題/領域番号 |
24520708
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
佐藤 久美子 玉川大学, リベラルアーツ学部, 教授 (60154043)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 言語調査 / 絵本読み / 保育園児 |
研究概要 |
引き続き、保育園及び幼稚園児を対象として絵本の読み聞かせを行なった。6~7名ずつのグループで行い、DVDによる録画と全体のマイク録音から、児童の発話を録音、記録した。子どもの全発話を対象としてカテゴリーに分類した。その結果、グループ内に1人のリーダー的存在の児童がいると、その子供の発話が引き金となり全体の子供たの発話が活性化すること、2~3名のリーダー的存在の児童がいると、リーダーの発話のみが活性化され、他の児童の発話数が減少すること、リーダー的存在の児童がいないと、全体の子供の発話数が不活発に終わることが明らかになった。子供の絵本読みは、教師役の読み方のみならず、ピア・ラーニング的な力も子供の発話量影響を与えることをつきとめた。 アイトラッカーを用いて、保育園児2名(3~4歳)を対象として、当大学の赤ちゃんラボに来ていただき、朗読を聞いている時の絵の注目度を計測した。その際、can, henなどの文字の上に、イラストを描いた場合と、文字のみの場合を2種類のテキストを用意し調査を行なった。その結果、文字の上にイラストを置いた場合の方が、文字への注目度が高いことが明らかになった。ただし、注目度は高いが、絵本に載っていた単語の記憶テストを行なった結果、イラストへの注目度と語彙の記憶度には統計的な有意差は見いだせなかった。平成24年度は被験者数が少なかったので、平成25年度はアイトラッカーを用いた調査では被験者を増やし、また、絵本の読み聞かせ調査では小学生を対象として引き続き調査を行う予定である。 しかしながら、イラストへの注目度が高いところから、絵本を読むときに文字を指差しながら読む相互型の読み方は、sight wordへの注目度、記憶をアップする有効な方法であるとことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、保育園での絵本の読み聞かせ調査及びアイトラッカーを用いた、イラストや文字への注目度の調査は順調に行われた。ただし、小学生を被験者とした調査は達成されず、アイトラッカーを用いた被験者数が不足していた。平成25年度は、小学生の対面調査を行うと共に、被験者数をさらに確保することが求められる。
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今後の研究の推進方策 |
保育園での絵本の読み聞かせにおいて、読み手の相違による児童の発話傾向の違いをさらに調査すると共に、理解度については、読み聞かせの前後に絵本に載っている単語のイラストを用いた語彙調査を行う計画である。これにより、読み手の相互作用の違いが、単語習得度の度合いという数値化で表すことが可能になる。読み手については、CDを用いた読み方と、調査者が肉声を用いた読み方の違いも比較する。 同様の調査を小学生対象にも行い、think aloud手法を用いて読み手の読み方の違いと被験者の語彙習得の度合いを調査する。CDと肉声を用いた読み方の違いも合わせて調査する。小学生の場合は思ったことや感じたことなどを明確に説明する面接調査が可能になるので、グループとごとの調査と同時に、一人ずつ対面調査を行う予定である。 アイトラッカーを用い、平成24年度に引き続き保育園児を対象に被験者を10名まで増やして調査を行うと共に、小学生10名を対象とした文字への注目度調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
小学生及び保育園でも絵本読みの対面調査を行うため、大学院生などに絵本読みを手伝ってもらう必要があり、さらに、子供の発話の書き起こし及び発話カテゴリーの分析も必要となり、その際の謝金に約60万円を充てる予定である。平成24年度は被験者数が少なかったため、謝金の支出を含めて繰り越し金が発生したが、平成25年度は被験者数が増大するため、謝金の増加が見込まれる。 また、保育園などへの交通費と学会発表用の交通費に約30万円を充てる。平成24年度は保育園の出張も2回にとどまり繰り越し金が発生したが、平成25年度は学会発表も含めて複数回出張予定である。また、子供の発話データの書き起こし、発話分析をするためPCを2台購入予定であり、約70万円を充てる。子供の発話データの書き起こし、発話カテゴリーの分析などを比較検討するために印刷を大量に行う必要があり、インク代などの消耗品に20万円、絵本代金などの消耗品に10万円を充てる予定である。
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