研究課題/領域番号 |
24520708
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
佐藤 久美子 玉川大学, 教育学研究科, 教授 (60154043)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小学校英語教育 / 絵本の読み聞かせ / 必然的な場面設定 / 音の出るペン / ストーリーテリング |
研究実績の概要 |
今年度は特に「音の出るペン」を用い、また、子どもたちが話したくなるような状況=場面を設定する場面設定型授業システムを構築し、子どもの発話数、教師や友人とのコミュニケーションの発話量が増える工夫をした指導法を検証した。 この指導方法を取り入れた英語活動の授業を、2014年6月23日~26日に、都内の小学校4年生を対象として実施した。①絵本(Oxford Reading Tree)を導入したクラス(1組)、②電子黒板を利用し、同じ絵本を導入したクラス(2組)、③Hi, friends!を使ったクラス(3組)で、合計12時間の授業を行った。同じ表現I like apples. Do you like apples? が目標言語であり、4校時の単元構成からなる。 3クラスの結果の違いは、①子どもたちへの授業の振り返り記述(自由記述および選択)、②子どもたちへのアンケート、③好きな食べ物をトッピングして描かせたケーキの絵(絵本のストーリーにリンク)、④授業ビデオからの観察、以上4点から比較した。アンケート結果からは、①大きな声で話すことができた、②5人以上と話すことができた、③失敗しても積極的にがんばった、などの項目ではクラス間に差がなく、満足している結果が出ているが、④勉強した会話の意味が分かった、という項目で、1組、2組は回数を追うごとに分かった割合が増えていく一方で、3組は、最終的に1組、2組の83%、90%に対して、69%と低かった。また、描かせた絵や振り返りシートからも、絵本を使い必然性のある場面が設定されたクラスからは、積極的に話したい、話せた、という子どもたちの結果が表れていた。さらに、音声ペンを使うことで発表時に声やジェスチャーが大きい、という違いも見られた。研究概要は、教育システム情報学会全国大会、日本児童英語教育学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小学生を対象とした検証授業を、都内の小学校で12時間、函館市の小学校で5時間行うことができたため、小学生からのアンケート、ビデオからの発表風景の様子など、大量のデータを収集できた。現役の小学校教員による協力が得られたことが大きな要因となっている。そこで、相互方読み聞かせの指導過程について、子どもたちが自信を持って答えることができる教師の読み方、指導方法を構築できたのみならず、子どもたちが自ら、意味が分かった、自分たちのことを実際に話してみたい、と思わせる指導法や教材、ワークシートなどについても合わせて開発することができた。さらに、音の出るペンを使用した絵本の読み聞かせについても、企業の協力が得られて、小学生向きの音の出るペンを共同開発できたことが大きな成果を上げられる大きな要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
Oxford Reading Treeを対象とした、音の出るペンをさらに2015年度の夏までに、新たに企業の協力を得て開発されることになり、これを用いた検証授業を小学生を対象としてさらに行う予定である。小学生が自主的にこのペンを使い、どの程度発音や表現を学ぶことができるかを検証し、そこで養った表現力を、自分たちが話したい内容の応用まで広げられるか検証することが、今年度の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来開発予定だった音の出るペンとそれを使ったワークシートなど、すべて企業の方が無償で寄付をしてくださり、そのために開発費や教材作成費がすべてかからなかったため。また、新しい指導法を用いた絵本の読み聞かせの検証授業においても、現役の小学校教員が協力を申し出てくれたため、交通費なども節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
音の出るペンを使った新たな教材を現在企業が開発中であり、これが夏に完成予定である。これを用いて、再度必然性のある場面設定型授業、指導法を使った検証授業を行い、子どもたちの発話を促す相互方読み聞かせの指導法を検証する。そこで、撮影やビデオ編集を行うスタッフへの謝金、アンケート作成のインク及び印刷代金、この結果を発表する学会参加に係わる旅費交通費に充てる計画である。
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