研究実績の概要 |
本研究では、これまでに申請者らが行ってきた基礎的な研究(平成21~23年度)を量的・質的に発展させ、より広範な理論的・方法論的示唆を得ることが目的であった。これまでの研究では日本人英語学習者が、同一のライティングタスクを授業で毎週、1年間繰り返した場合、ライティングにどのような変化が起こるのかを複雑系理論のアプローチから探索的に調べた。本研究では、研究範囲を拡大し、普遍的な発達パタンの存在をより確証的に調べる計画であった。 (1)本研究によって明らかになったこと 本研究ではこれまでの研究からデータ収集範囲を質・量ともに拡大し、延べ15 クラス、約400 名の学生からデータを得た。これをこれまでに開発した研究手法と新たに開発した変化点分析、および複数の質的研究手法を組み合わせて分析した。その結果、個人のライティング発達には特定のパタンを示す場合が存在すること(Baba & Nitta, 2014)、目標設定や動機付けの維持などの自己調整の方法が長期的には発達に影響を与えることなどを示した(Nitta & Baba, 2015, in press)。これらの研究によって長期的混合型研究法を提案することができた。 (2)研究成果の発表 本研究に基づく研究成果は、現在までで7本の学術論文、1冊の書籍、1回の招待講演、3回の招待シンポジウム、8本の一般雑誌記事として発表した。中でも世界的に最も権威のある学術雑誌(Language Learning)に掲載された論文は(Baba & Nitta, 2014)その編集長の研究論文(Ortega, 2015)に引用されるなど世界的に評価されている。また、2016年に出版した書籍と、『英語教育』に掲載された8本の記事ではこれまでの申請者らの研究を紹介し、教育実践に携わる中・高教員にも複雑系アプローチの重要性を訴え、反響を得ている。
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