本研究の目的は、日本と韓国の初等教育の高学年において、英語学習動機の差異を明らかにすることであった。同時に国別、海外経験別の2群で英語学習動機に影響を及ぼす要因のプロセスの差異を多母集団同時分析により明らかにすることであった。日本の小学5・6年生812名、韓国の小学5・6年生809名を対象に英語学習動機を調査した結果、日韓の小学校高学年の英語学習動機はどちらも同じ4因子構造をしており、それらのうち、「有用性」、「交流欲求」、「不安回避」の3因子で韓国の方が日本よりも高いことが分かった。また、日本と韓国の2群による多母集団同時分析では、「学校」要因から「交流欲求」へのパスで日本の方が有意に高かった。このような差異は日韓の学習内容の相違から生じるものと考えられる。さらに、「家族・友人」要因から「不安回避」へのパスでは韓国の方が有意に高かった。これは、韓国の児童を取り巻く環境が英語学習に対する心理的プレッシャーとなっていることに起因すると考えられる。海外経験の有無別による英語学習動機に影響を及ぼす要因のプロセスに関しては、「学校」要因から「有用性」へのパスで、海外経験がない群の方が、海外経験がある群よりも有意に高かった。海外経験がない児童にとっては学校での英語教育が学習動機を高めるたにより重要な役割担うことなどが示唆された。今後の課題としては、日韓以外の他国の小学校高学年児童の英語学習動機を調査し、より立体的な分析を行う必要がある。
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