研究課題/領域番号 |
24520722
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松岡 里枝子 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20469977)
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研究分担者 |
POOLE Gregory 同志社大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60307147)
松本 佳穂子 東海大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30349427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コミュニケーション意欲 / コミュニケーション不安 / 外方向意識 / 世間・世間体 |
研究概要 |
英語学習に熱心で英語能力が適切に備わっているにも拘わらず英語でのコミュニケーションが不可能であると感じている日本人大学生に焦点をあて、いかなる要因がコミュニケーション行動を阻止しているかを探求し、実際の国際社会で活躍可能となる日本人を育成する教育への効果的示唆を与えることが当該研究の主要たる目的である。 具体的に当該年度前半においては、コミュニケーション行動への阻止要因を探求するための第一段階として、1950年代に行われたGardnerとLambertによる言語学習者の社会心理的研究までさかのぼり、MacIntyerらによって第二言語習得へ応用された、McCroskeyによるコミュニケーション学概念であるWillingness to Communicateに注目した最近のアジアや中東における学習者の言語心理行動を分析した研究にいたるまで先行研究を行った。また日本人の社会人類学的特徴について言及した人類学の文献にもあたり、日本人にとって所謂「世間(体)」がどのような意味をもつのか等を考察し国際学会にて発表し、有意義なフィードバックを参考にさらに考察を深めた。 上記文献検討に基き、後半は、日本人大学生英語学習者の社会心理学的特徴および文化人類学的特徴を表出するであろう質問項目236からなる質問紙を分担研究者・研究協力者の助言を参考にしながら構築した。質問紙構築にあたり、コミュニケーション行動分析に重要であると考える概念として、コミュニケーション意欲、コミュニケーション不安、外方向意識に注目し、外方向意識については、「世間(体)」という社会学的概念を組み入れながら考察しうるであろう項目を考案する努力をした。236項目からなる質問紙調査に関しては、200名強の大学生英語学習者対象に行い、因子分析を行っている。現時点で30%のデータ入力をもとに要因の検討を行い、国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度において主たる成果物として計画していた、人類心理学の領域を含めた先行研究の検討および予備研究用質問紙の構築については、おおむね順調に行い、その成果は複数の国際学会で研究分担者および協力者とともに発表し、有用なフィードバックを得た。 既に記載されている論文については、アジア言語教育学会の論文集であるが、研究代表者が以前行ったfocus groupの形での質的データを用いた当該研究の目的に沿った小規模な研究論文である。また、査読結果はまだであるが、IALIC(国際言語異文化コミュニケーション学会)の学会誌には、分担者、協力者ともに著者に加え、当該研究の先行研究の文献検討と予備研究用質問紙作成の内容での論文を投稿した。 しかし236項目からなる予備研究用質問紙の統計解析については予定では昨年度終了を予定していたにもかかわらず、本年度前期の課題として残った。236項目のデータ入力を短期間に研究代表者のみで行うことに無理があったと反省している。ただし、30%の入力データをもとに仮の統計分析結果は算出しており、その結果を参考に分担研究者の助言を得ながら、どの項目を本年度行う広範囲調査に用いるかについて時間をかけて検討した。しかしながら、最終的な本研究用の質問紙は予備研究の残り70%のすべてのデータ入力およびその統計解析(因子分析)の結果をみてからになる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度前半は236項目からなる予備研究用質問紙の因子分析を専門家の援助を得ながら行い、本調査用に約50項目からなる質問紙を完成させる。本年度は、データ処理の専門家の協力を得ながら、前半で本研究に向けての質問紙の構築を完成する必要がある。その際のデータ処理の依頼費用およびSPSSの統計ソフトの購入に研究費を用いる。また、すでに受諾されている国際応用言語心理学会の世界大会への研究論文は、当該研究そのものではないが、日本人の他方向意識を論じる内容で深く関係しており、6月にモスクワにて発表することになっており、研究費を用いて行う予定である。 後半は、約50項目に絞り込む予定の本研究用質問紙を用いて、被験者数を1000以上にすることを目標とし、分担者、協力者と話し合いを重ね、当該研究の目的遂行に相応しい対象校を選定する。その後、それら複数の大学に質問紙調査を依頼するが、その際生じる費用も研究費を充当する。さらに回収できたデータを統計解析するが、共分散分析用、統計ソフトの購入および統計処理費用についても研究費をもちいる。アジアTEFL学会等、国際学会での発表を申し込んでおり、受諾されれば、質問紙の完成に基いた考察を深め、研究発表に臨みたい。これら国際学会発表に際しても研究費を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度成果物として得られるであろう統計解析結果をもとに、さらなる文献検討と成果物の国内外学会での発表を行いながら、当該年度および本年度予定の研究成果に基いた半構成のインタビュー調査を実施し、量的研究結果に質的データからの考察を統合するのが、当該研究の最終年度となる次年度の目的である。 統計ソフトやデータ処理費用については本年度予定の研究が順調に進むことを前提に計画すると、次年度の研究費は、現時点で論文発表として申し込んでいる国際応用言語学会(AILA)を含めた複数の国際学会での発表参加に要する費用に用いる予定である。 また、3年間の研究成果を独自の論文冊子として纏めることを計画しているが、その際に生じる文献入手や事務的手数料、あるいは人件費に研究費を充当することになるであろうと考える。
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