研究課題/領域番号 |
24520722
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松岡 里枝子 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20469977)
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研究分担者 |
POOLE Gregory 同志社大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60307147)
松本 佳穂子 東海大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30349427)
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キーワード | 質問紙構築 / コミュニケーション意欲 / コミュニケーション不安 / 他意識 / 世間体 / 自己効力感 |
研究概要 |
当該研究の主たる目的は、英語能力および動機がともに備わっているにも拘わらず、実際の英語コミュニケーション行動に至ることを困難としている学習者の社会文化心理学的特徴を明らかにすることである。当該年度は昨年度先行研究に基づき構成した238項目からなる質問紙を200名以上の日本人大学生である研究参加者の調査結果を因子分析し、質問項目を大規模調査に相応しい30-50項目に精選することを行った。 238項目から50項目に絞られた質問紙について更に考察を加え、研究分担者および様々な言語文化背景を有する研究者と検討し、30項目に絞った。さらに因子分析によって排除した項目に関して、教育的介入を示唆する項目を加え、42項目からなる質問紙を大規模調査に用いる予定である。 質問紙作成については、分担研究者と相談を重ね、普遍的に日本人英語学習者の社会文化的特徴をより正確に測定することのできる質問紙を考案することの意義を重視し、当初予定していた計画案より多くの時間と労力をかけることとした。 なお、質問紙構築にあたり、韓国スワン市で開催されたPAAL(環太平洋応用言語学会)、フィリピン国マニラ市で開催されたAsiaTESOL(アジア英語教授学会)香港で開催されたILIAC(国際異文化言語学会)カンボジア国プノンペン市で開催されたCamTESOL(カンボジア英語教授学会)といった国際学会にて、日本人の英語学習に熱心な大学生についての社会文化心理学的特徴について質問紙構築を念頭にした研究発表を行った。特にカンボジア英悟教授学会では、多読指導の一環として行ったプレゼンテーションが参加大学生のコミュニケーション意欲を向上させることに貢献した成果が当該研究の具体的教授法の一例として示ことができた。また、各国際学会において本研究に関心を示す研究者とめぐり合うことができ、今後、国際比較としていくことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度において、文献および経験知に基づいて精選した質問紙について、大掛かりな調査を予定していたが、研究分担者と議論するなかで、質問紙作成にさらに力を加え、普遍的に言語(英語)学習者の社会文化心理学的特徴を測定することが可能となる項目を精選することが現英語教育をより効果的にするために意義があるとの見解を持つようになった。その結果、質問紙項目の精選に多くの時間をかけ、SPSSを用いた要因分析を複数回おこない、実績の概要に記したように、現段階で42項目の質問紙を作成した。本質問紙は、当該研究の目的である、英語コミュニケーション意欲の阻害要因を探るのに効果的であろうと考えられる。 また、複数の国際学会で本質問紙の構築のプロセスなど、発表することを通し、国際的比較が本研究をより生産的にすることに気づいた。すなわち、日本人学習者の特徴とおもわれる阻止要因が、諸外国に共通しているとすれば、人間の普遍的な社会心理学的傾向であると結論することができる。 さらに、効果的教授法という観点からプレゼンテーションを行うことが、自己効力感を高め、コミュニケーション不安を減じる可能性を示すデータを得ることができ、コミュニケーション意欲向上が英語指導法に左右されているとの仮説を立てるに至った。 当初の予定に則り、区分は(3)やや遅れている、としたが、国際比較の可能性およびコミュニケーション行動を促進する教授法の開発、といった、予想以上の成果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、3年目である2014年度は2013年度の大規模調査の結果を共分散構造分析を含めた統計処理を行い、その結果に基づいた論文執筆に費やす予定であったが、2013年度の予想外の成果により、日本国内での学部間比較等、複層的分析を行ない、英語コミュニケーション意欲・行動の阻止要因を綿密に検討することに加え、イタリアとの国際間比較を試みることを予定している。 さらに学習者からの質的データをもとに、英語コミュニケーション能力の向上にむけて効果的であると考えられる教授法についても検討する予定である。また、実際の教授法の効果についての論文を執筆し国際学会誌に投稿し、当該研究の成果とする。 国際学会に関しては、4月のイラク国のFirst Scientifc International Conferenceにおいて招待講演として発表した「Sociopsychological structure of Japanese 'good' learners」をはじめとし、既に研究発表が決定している、8月開催のAILA(国際応用言語学会)、9月開催のBAAL(英国応用言語学会)および、11月から12月にかけて開催され、今後発表抄録を作成し提出する予定のIALIC(国際言語異文化コミュニケーション学会)などにおいて、当該研究の成果を発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画当初の予定であった、統計処理が不要となったため、次年度使用額が生じた。 次年度における国際学会の研究発表の費用に当てる予定である。
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