最終年度は、モンゴル国立文書館で1910年代の地図作成に関する政府の指示、それに対する地方の役所の対応についての文書をおもに閲覧し、清代に確立された地図作成に関する行政が独立後の王制モンゴル国時代にも継続された点、1915年のモンゴル・中国・ロシアの三国協定で規定された、外モンゴルと中華民国内の他の地域の境界の画定のために地図作成の指示がだされた点がたいへん重要であることをあきらかにした。 最終年度の2014年8月にモンゴルのウランバートルで、モンゴル科学アカデミー歴史研究所、モンゴル国立大学モンゴル研究センター等と共催で、本研究課題の整理もふくめ、モンゴルの地図、地名に関する国際シンポジウム「モンゴル人と地図――モンゴルの地図・地名の歴史学的・文化学的研究」を開催した。同シンポジウムには、5カ国の研究者が参加し、26本の報告がなされ、世界的な規模でのモンゴルの地図・地名研究の発展に貢献したと評価された。 研究期間全体をとおして、モンゴル国立図書館、同国立中央文書館、ドイツ・ベルリン州立図書館、日本・天理図書館に所蔵される清代、1910、20年代の手書きの地図がどのような行政上の必要から作成されたかについて、地図と関連資料、とくに地図に添付された目録と文書の精査にもとづいて研究するという本プロジェクトの目的は、それぞれの時期の地図作成の命令とその政策的背景をほぼあきらかにしえたという点からみて、基本的に達成されたとみることができる。
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