研究実績の概要 |
戦間期(1910年代後半~1930年代)の日本の出版・読書文化の大衆化現象を国際的な見地から見直すべく、手始めとして英米の事例との比較検討を行った。日本、米国、英国の図書館・資料館(東京大学明治新聞雑誌文庫、国立国会図書館、日本近代文学館、お茶の水図書館、New York Public Library, The British Library等)で様々な雑誌・新聞を調査した。その結果、世紀転換期から戦間期にかけて編集手法・営業手法・読書規範においてはほぼ同様の変化が見られるものの、視覚表象の用い方やレイアウトの傾向にはそれまでの出版・読書文化の歴史的経緯を反映してそれぞれの地域で違いが認められることが判明した。また、読者傾向および実際の読書形態と性差の関わりについては、少なくとも当該の期間における日本の事例は他の二カ国とはかなり異なる傾向を示していたことも明らかになった。 こうした研究成果は国内外の学会で発表され、共著書 Japanese Journalism and the Japanese News Paper(2014年)に収められた論考“New Journalism in Interwar Japan”に結実した。平行して行われた「近代的な日常生活」の表象・言説に関する研究成果も国内外の学会で発表され、共著書 Resilient Japan(2013年)所収の論考“Constructed/Constructing Bodies in the Age of the New Middle Class”にまとめられた。本研究を通して、世紀転換期から戦間期における出版・読書文化の大衆化および近代的生活観形成の世界同時性が確認されたとともに、それ以前の展開の流れを視野に入れつつ考察する必要性も今後の研究課題として新たに浮上してきた。
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