研究課題/領域番号 |
24520735
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 信 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80132744)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地方官衙 / 国府 / 郡家 / 律令制 / 律令地方行政 / 古代交通 / 木簡 / 文書行政 |
研究概要 |
本研究は「古代地方官衙における地域間交流の研究」をテーマとする。第一年次の実績としては、第一に、古代の地方官衙に関する基礎的な史料や遺跡・遺物の最新発掘調査情報などの資料収集を進めた。これまでの研究のネットワークを活かして、各地の地方官衙遺跡に関する情報収集と調査に努めた。第二に、地方官衙遺跡をめぐる多様な交流と機能のケース・スタディとして、岩手県の徳丹城・鳥海柵、宮城県の多賀城、茨城県の台渡官衙遺跡群、群馬県の上野国分寺・多胡郡家・三軒屋遺跡、東京都の武蔵国分寺・武蔵国府、川崎市の橘樹郡家、新潟県の八幡林官衙遺跡、石川県の東大寺領横江荘遺跡、奈良県の東大寺、島根県の出雲国府、福岡県の大宰府・宗像神社・こう廬館、熊本県の鞠智城、宮崎県の日向国府などに関する調査・検討を進めた。これらの遺跡や出土文字資料をめぐる資料収集を行ったほか、地方官衙の機能と交流に焦点をあてた研究を進め、研究成果をまとめて、一部を論文(「古代鞠智城と東アジア」「国分寺の造営と在地社会」)・口頭発表(「東大寺横江荘遺跡を考える」「律令国家と出雲」「越後の木簡が語る古代史」「古代の地方豪族と官衙」)で公表した。第三に、東アジアにおける関連調査として、台湾・韓国における地方行政に関する資料・遺跡の調査を行い、研究交流も行った。また第四に、奈良文化財研究所で開かれた古代官衙・集落遺跡研究会や木簡学会に参加し、最新の研究状況の把握と情報収集に努めた。 これらの調査・研究を通して、基礎的な資料収集を進めた上に、古代地方官衙の果たした多様な機能とそれを担う諸施設のあり方、諸レベルの地域間交流の実像について、具体的に一定の把握を達成することができた。なお、共編著で刊行した須田勉・佐藤信編『国分寺の創建 組織・技術論』(吉川弘文館、2013)は公益財団法人交通研究協会から第1回「住田古瓦・考古学研究奨励賞」を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「古代地方官衙における地域間交流の研究」をテーマとする。第一年次の達成点としては、まず第一に、基礎的な地方官衙に関する史資料の収集について、各地の地方官衙遺跡(関連する城柵・寺院などの遺跡をふくむ)やその出土文字資料に関する発掘調査情報の収集を着実に進めることが出来たことが指摘できる。発掘調査報告書についても、各調査機関のご厚意も得られたことによって収集を進めることが出来た。第二には、列島各地の地方官衙遺跡の現地調査と検討について、ケーススタディを着実に進めることが出来た。「研究実績の概要」に記したような岩手・宮城・茨城・群馬・東京・川崎・新潟・石川・奈良・島根・福岡・熊本・宮崎などの県市にわたる各地の地方官衙関係遺跡についての資料収集・調査・研究を進めることが出来、そのうちいくつかについては、論文(「古代鞠智城と東アジア」「国分寺の造営と在地社会」)・口頭発表(「東大寺横江荘遺跡を考える」「律令国家と出雲」「越後の木簡が語る古代史」「古代の地方豪族と官衙」)などで公表・発信することが出来た。第三には、東アジアにおける比較検討のための台湾・韓国における関連遺跡・資料の調査を進めることが出来、研究交流も一部果たし得たことである。さらに第四として、奈良文化財研究所で開かれた古代官衙・集落遺跡研究会や木簡学会に参加して、最新の資料収集と研究状況の把握や研究交流を行うことが出来た。 これらの資料収集・調査・研究における平成24年度の到達点によって、本研究はおおむね順調に伸展しているといって良いと考える。さらに、来年度の研究に向けての見通しをも、一定程度得ることが出来たものと考えている。 なお、共編著で刊行した須田勉・佐藤信編『国分寺の創建 組織・技術論』(吉川弘文館、2013)は公益財団法人交通研究協会から第1回「住田古瓦・考古学研究奨励賞」を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、今後も平成25年度・26年度まで継続することを予定している。 平成25年度については、平成24年度の資料収集・調査・研究の達成をふまえた上で、引き続き地方官衙遺跡や関連する城柵・寺院・祭祀・駅家等の遺跡について、発掘調査成果や出土文字資料などの資料収集の蓄積を進める。それとともに、さらに列島各地の地方官衙を対象としたケーススタディも展開したい。とくに昨年度未調査の国府・郡家や城柵・駅家などにも対象を広げたいと考える。そして、収集したデータの整理・分析・検討・研究へと軸を移しつつ、古代地方官衙に関する歴史景観復元的研究を推進したいと考えている。また、第一年次には手薄だった地方官衙と古代交通との関係についての研究にも焦点をあてたい。こうした出土文字資料の資料整理・検討や官衙遺跡の機能に焦点をあてた分析・研究などの際に、大学院生たちとの間で研究会を展開して、さらなる成果を積み上げたいと考える。 続く最終年度の平成26年度には、引き続き資料収集や地方官衙遺跡の現地調査も多面的に行いつつ、これまで収集した多様な資料データをもとに、さらにそれらの整理・分析・検討をとりまとめる段階に進みたい。古代地方官衙が果たした多様な機能とそのための施設のあり方を明らかにし、歴史景観復元的な研究を具体化したいと考える。この段階でも、個別の検討に際して大学院生たちとの研究会を引き続き展開し、研究成果のさらなる上積みを図りたい。最終的に、様々な蓄積収集データの公表を目指すとともに、研究成果を論文などの形としてとりまとめ、本研究における研究成果を広く公表する内容をもつ報告書の作成まで実現したいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記した「今後の研究の推進方策」に従って研究を進める上で、平成25年度・26年度まで続ける予定の本研究では、次年度以降下記のような研究費が必要となる。こうした必要研究費が、そのまま使用計画となる。 平成25年度には、上記研究推進方策を実施するなかで、設備費として昨年未購入のプリンタ、発掘調査報告書などの図書資料購入費、列島各地の地方官衙遺跡(国府・郡家だけでなく城柵・駅家や関連する古代道路・官営工房などをふくむ)およびそこからの出土文字資料などを調査するための国内旅費、同じく地方官衙研究関係の学会に参加するための国内旅費、東アジア的視野から比較研究するための中国等への外国旅費、そして大学院生をふくめた研究会における資料の分析・検討にあたっての資料整理謝金などの研究費が必要となる。 続く最終年度の平成26年度には、発掘調査報告書などの図書資料購入費、調査や資料・情報収集そして関連学会参加のための国内旅費、比較研究のための外国旅費、大学院生をふくめた研究会における資料の分析・検討にあたっての資料整理謝金、そして研究成果をまとめて公表する報告書を作成するための印刷費などの研究費が必要となる。
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