「古代地方官衙における地域間交流の研究」をテーマとする本研究の最終年度において、テーマに関係する史資料や発掘調査成果などの情報収集をさらに進めた。そして、とくに古代東国を中心とした律令国家期の地方官衙の郡家(郡衙)をめぐって、律令国家と地方官衙との関係をはじめとして、七世紀以前にさかのぼるヤマト王権時代の王権と地方豪族との関係、東アジア(渡来人をふくむ)や隣接他地域との交流の実像、陸上・水上交通路とのリンク、仏教・神祇信仰の受容、漢字文化の受容などの諸面にわたって、これまでの調査・研究をとりまとめる研究を進めた。合わせて、国府(国衙)における中央からの派遣官国司と在地の郡司たち地方豪族との関係についても、考察を進めた。 本研究によって、古代の日本列島において、地方官衙にみられる諸地域との多元的な交流の盛んな展開の実像が見えてきたといえよう。もと国造や屯倉管理者などとして伝統的な地域支配権を継承してきた郡司たち地方豪族は、こうした開かれた交流を進める中で律令国家の地方行政体系の中に自らを位置づけており、こうした郡司たちを地方官として取り込むことによって、律令国家は中央集権的な国家体制を形作ることが出来たということが明らかになってきたと考える。 2014年度は、これまでの研究成果を「郡家の構造と機能」(『出雲古代史研究』24号)としてまとめ、また辺境地方官衙の検討事例を「古代の陸奥国気仙郡と郡司金氏」(『陸前高田市文化財等保存活用計画策定調査業務報告書資料編』)としたほか、地方官衙国府について出雲国府の事例検討の成果を、『松江市史 通史編1自然環境・原始・古代』(松江市)として公表した。そして、2012~2014年度にわたった本研究による調査・研究の成果を、データとしてまとめることによって、今後の成果提供に資することにした。
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