研究実績の概要 |
①未整理であった東京大学史料編纂所所蔵「赤門書庫旧蔵地図」の目録作成作業を完了した。これにより、本史料群が近代的国土表現の模索過程を具体的に示すものであり、またこの時期の日本版・イギリス版海図の国内有数の地図群であることが明らかになった。同地図群は、近日、東京大学史料編纂所において一般公開の予定である。 ②本共同研究では、毎年研究成果を一般に公開する展示会・研究会・講演会を開催してきたが、本年度はその締めくくりとして、映画上映会・講演会「海の把握・支配をめぐる経済史・科学史・歴史学の対話」を開催した(2015年1月10日 東京大学福武ホール):映画『海図のできるまで』(水路部80周年記念事業後援会企画、1951)上映、村山英世氏(記録映画保存センター)「映画の保存と復元」、高橋智子氏(山梨大学)「水路測量から『航空暦』の編纂まで―日本海軍水路部の軌跡―」、横井勝彦氏(明治大学)「イギリスの海洋支配とアジア―『海上漂流の経済史』を脱して―」。 ③本共同研究の研究成果をまとめた『東京大学史料編纂所研究成果報告書 2014-3 近代移行期の歴史地理把握のタイムカプセル・赤門書庫旧蔵地図の研究』(本文392頁)を印刷し、国会図書館以下関係諸機関、個人に送付した。 ④研究成果の一部は、University of Chicago Pressから出版予定の、Karen Wigen, Sugimoto Fumiko ,Cary Karacas 編『Cartographic Japan: A History in Maps 』に反映させた。「赤門書庫旧蔵地図」をはじめと鮮明な地図画像を掲載し、16-20世紀日本の、高度で洗練された地図文化と日本社会の特質を論じた本書は、英語圏の読者に、具体的な深みをもって日本社会や人々の世界理解と営み、近代化の模索について理解させることが可能と考えられる。
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