研究課題/領域番号 |
24520741
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
原 直史 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70270931)
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研究分担者 |
浅倉 有子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (70167881)
岩本 篤志 立正大学, 文学部, 講師 (80324002)
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キーワード | 藩地域 / アーカイブズ |
研究概要 |
前年度の実績である『新発田藩溝口家書目集成』および『新発田藩道具帳集成』の刊行を基盤として、本年度、とりわけ藩政アーカイブズ研究部門、および蔵書アーカイブズ研究部門においては、これに追加すべき史料の収集・分析に注力した。一方地主・町村アーカイブ研究部門においては、前年度の遅滞の反省を踏まえたうえで、新発田組庄屋(大庄屋)斎藤家文書等を対象とした調査に取り組んだ結果、組レベルでの地域的入用をめぐるテーマについての論文を、後掲図書『環東アジア地域の歴史と「情報」』中の一章(原直史「支配錯綜地域における地域的入用―新発田藩の万雑とその周辺」)として発表することを得た。この成果は、藩地域を構成する「組」組織の運営について、組レベルのアーカイブズの特質を意識しつつ、従来看過されていた部分も含めて光を当てたもので、本科研テーマの有効性を示すものとなった。 全体の取り組みである史料情報の電子化については、対象候補の子細な検討の結果、当初予定に含まれた史料本文の電子化には至らなかったものの、既刊目録情報の電子化については学生アルバイトを雇用しつつこれを完了し、現在サーバーの設置を経て公開に向けた調整中の段階である。 本年度の研究実績のうち特筆すべきことは、代表者・分担者に一般の参加者も含めた公開の「新発田藩研究会」を立ち上げ、7月7日、3月9日の二回にわたり開催することを得たことである。これによって本科研代表者・分担者相互、および関係者との間での意見交換がすすみ、当該研究分野についての知見を格段に深める結果に結びついた。前述の論文もこの研究会での発表をふまえつつ完成したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度において地主・町村アーカイブズ研究部門が遅滞している点が指摘されたが、この反省を踏まえ適切な調査対象を選定した結果、上記概要に記載したような形で成果をあげることができた。また藩政アーカイブズ研究部門・蔵書アーカイブズ研究部門においては、着実に知見が積み上げられている。 一方史料本文の電子化については、対象候補を検討した結果いくつかの問題が判明し進展を見なかったが、これを補うものとして刊行史料集の作成を準備し、作業中である。なお前年度中途であった目録情報の電子化は完成を見た。これらのことから、この部分についてもやや遅れがみられるものの、決定的に遅れているとまではいえない。研究会の複数回開催という成果も踏まえれば、全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究の最終年度であることから、総合的なとりまとめが必要である。 まず第一には、現在取り組みつつ年度を越えることになっている、刊行史料集の作成、電子化した目録情報のサーバーへの実装・公開について早期に取り組むことが必要である。これを踏まえてさらなる調査分析を重ねていくことになる。 全体まとめを兼ねて、年度後半の適当な時期に、当該テーマについて高度な知見を有する外部の研究者も招きつつ、シンポジウムを開催することは、当初よりの計画に含まれている。これを具体的に計画実施することを通じて、3年間の研究成果を総括し、さらに今後につなげる論点を明らかにすることが、最終的な課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用分が生じた理由は、前年度において予定していた史料本文の電子化作業において、候補対象を検討した結果これを行うことが困難であることが判明したため、およびこれを補うことも含めて、刊行史料集の計画・編集を練り直すなどしたことから、この刊行に宛てる経費の年度中執行ができなかったことによるものである。 上記理由に鑑み、この部分の経費は刊行史料集の作成、および別対象を選定しての史料電子化計画により、使用することが本旨であり、そのように計画を立てて使用を行う。具体的には刊行史料集は夏前の早期の完成を目指して作業中であり、これを計画通り進めると共に、学生アルバイトを雇用しての電子化作業については、あらたな対象の選定を夏期までには終わらせ、夏期休暇中等の雇用実現を目指すこととする。
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