研究課題/領域番号 |
24520743
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
黒川 みどり 静岡大学, 教育学部, 教授 (60283321)
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研究分担者 |
小嶋 茂稔 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20312720)
與那覇 潤 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (50468237)
姜 海守 国際基督教大学, 付置研究所, 研究員 (60593928)
山田 智 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90625211)
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キーワード | 中国認識 / 内藤湖南 / 朝鮮認識 / 他者 / 近代 |
研究概要 |
当該年度は、『内藤湖南とアジア認識―日本近代思想史からみる―』山田智・黒川みどり編著、勉誠出版、2013年5月、総307頁)を刊行した。 内藤の中国観に対する評価、特にアジア・太平洋戦争後の内藤の中国観に対する批判およびそれに対する反批判の展開については、本論集所収の各論考の中で説明しているが、これまで内藤の中国観をめぐる議論は、主として中国史などの中国を対象とする学問領域の担い手によってなされてきた点だけは確認しておきたい。そのため内藤の思想形成についての検討もその漢学的な素養の形成が中心となり、そこから導かれる結論は、「漢学者」あるいは近代においてその後継者と位置づけられた「支那学者」としての内藤の思想の正統性に留まるものであった。しかし内藤が生きたのは漢学の全盛期である江戸時代ではなく、西欧で育まれた近代社会科学思想を積極的に摂取することを国是としていた近代の日本である。その近代日本を舞台に展開された、内藤のある種異様ともいえる中国観・文明観は、日本近代思想史の文脈の中での学問的検討を経てこそ、正当に評価されうるのではなかろうか。 このような問題意識を共有しながら、日本近代史と中国古代史とをそれぞれ専門としている者によって本論集を編んだことの意味は大きく、書評会などをとおして反響も出始めている。 それをまとめた後は、他者認識の有りようを原点に立ち返って点検するべく、丸山眞男の著作などを研究会でとりあげ、議論してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度に、代表者と分担者1名が共同編者となり、分担者・協力者全員が参加して『内藤湖南とアジア認識』(勉誠出版)を刊行した。研究途中で内藤湖南を軸にしながら論文集を世に問えたこと、そしてその内容は、当初考えていた以上に進展をみたものと評価している。内藤湖南の位置づけについて、むろんまだ課題は残るものの、我々の見解を一定程度提示し得たものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
内藤を軸にした研究をまとめたので、一方ではこのあとの内藤湖南についての研究を進める一方で、対象を広げて新たな視角を打ち出すべく研究会で議論を重ねて模索しながら、研究を進めていきたい。 当面、近代日本のアジア認識について再度研究史を整理すること、その上で、近代のナショナリズムをどのように理解するかについて検討を重ねること、そしてそれにふさわしい研究対象を設定することであると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に中国の環境悪化等を踏まえて中国への調査旅行を延期し、国内調査に切り替えたことによる。 次年度は台湾または中国への調査旅行を計画している。
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