本研究は、首都東京の軍隊の特質に注目し、明治初期の近代日本の軍隊形成期において,首都東京の軍隊が如何に位置づけられ,どのように部隊が配置され,そのためにどのように軍用地が創出され,どこから,どのような兵士が徴集され,如何なる錬成が施されたのか,そしてその結果,東京という地域と軍隊という存在が如何なる関係性,特色を形成したのかという点を、明治大正期を中心に、総合的に解明することを目指してきた。そしてその成果の一端は、荒川章二編著『地域の中の軍隊 第2巻 関東 帝都としての軍都』(吉川弘文館,2015年2月)としてまとめた。今年度は、今後の全体的な首都東京の部隊の特殊性検討の総括作業の前提として,陸軍部隊の歴史的変遷,個々の時期の固有の性格などを把握しておく必要があり、戦前の部隊編成の変遷を概括的におさえる作業を、その一つとして進めた。その成果は、原田敬一・荒川章二ほか編著『地域の中の軍隊 第8巻 基礎知識編 日本の軍隊を知る』の刊行(吉川弘文館、2015年6月)、同書における拙稿「陸軍の部隊と駐屯地・軍用地」としてまとめた。 もう一つの作業は、日本で最も早く着手された東京湾の要塞化という観点からのアプローチである。この点は、対馬や沖縄の軍事化や要塞化の研究と併せて調査を進めた。沖縄の戦前軍事史・徴兵制の特質については、2015年9月、『日本学叢書』(青弓社)に関わる研究会(於:南山大学)での発表を行い、成稿に仕上げ2016年度に刊行予定の同書にて発表する計画である。本研究の目的に照らしてこの作業は迂遠なようだが、帝国の周辺における要塞化・軍事化の様相を検討することで、東京湾防備の特質を考察する予備作業として位置づけており、今後東京湾防衛構想を中心として検討する研究につなげていく。
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