研究課題/領域番号 |
24520751
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
長谷川 博史 島根大学, 教育学部, 教授 (20263642)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 棟札 / 中世 / 山陰 |
研究概要 |
本研究は、地域に即した基本的・基礎的な情報が盛り込まれた一級史料であるにもかかわらず、これまで本格的な収集がなされていない中世山陰地域の棟札について、銘文に関わる文字情報を網羅することを一つの目的としている。具体的には、石見・出雲・隠岐・伯耆・因幡を中心とする棟札銘文の情報を、江戸時代以降にも下って検索・収集し、銘文の内容に関する情報の蓄積を図っている。 そのため、平成24年度においては、〔1〕銘文の内容に関する情報の蓄積と、〔2〕原資料の確認と調査を行った。〔1〕銘文の内容に関する情報の蓄積については、島根県立図書館所蔵の「島根県史編纂筆写史料」や「寺社史料」に含まれる棟札に関する文字情報の収集に最も多くの時間を費やした。情報量が予想していたものよりもはるかに多かったため、中世以前のものを中心に、おおむね17世紀以前の文字情報の整理を中心に作業を進めた。このうち「寺社史料」については、主要な部分を写真撮影することができた。〔2〕原資料の確認と調査については、一部のみの実施にとどまったが、松江市内における棟札の実見や写真資料の検討を通して、文献史料の乏しい時代や地域の復元に、きわめて有効な情報であることをあらためて確認した。その際、松江市教育委員会に大変お世話になった。なお、島根県内の情報は、明治時代の網羅的な記録をふまえて行うことが望ましいと考えられ、〔1〕を重点的に行うことは、今後の調査を進める上で欠かせないものであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究には、〔1〕銘文の内容に関する情報の蓄積、〔2〕原資料の確認と調査(①調査方法の検討、②調査対象の選定、③調査の実施と結果の整理)、〔3〕棟札の史料としての特質や記載内容の特質に関する分析と総括という、3つの目的があるが、特に重視しているのは、〔1〕と〔3〕である。平成24年度は、〔1〕と〔2〕の一部に取り組んだ。このうち〔1〕については、中世山陰地域の棟札銘文の情報を、江戸時代以降にも下って検索し、銘文の内容に関する情報の網羅的収集を図り、原資料以外のあらゆる文献等に写された情報を収集することが中心的な課題となっているが、未だにその全貌が明らかになっているわけではなく、最も多くの時間を要した。現時点では、出雲地域の17世紀以前の情報を収集・整理しており、今後順次拡大していく。当初の予定よりも時間を要している理由は、情報量が多いことによる。また、作業内容が画一的・機械的なものではなく、棟札特有の情報整理の難しさがあるため、分担も容易でない。このことは、申請段階から想定していたことでもあり、また目的とするところに照らし、さらには本研究が最も重視している部分においては、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、山陰地域における原資料としての棟札を網羅的に悉皆調査することを直接の目的とするものではなく、その実現を図るため将来に向けた基盤を作ることを目的としている。 本研究の目的のうち、〔1〕銘文の内容に関する情報の蓄積について、引き続き作業を進める。その際に、どのような形式で情報を整理するのか、さらに検討を進める必要がある。また、今後さらに新しい情報を追加できる可能性があり、期待される。実質的には、これらの情報収集・整理作業を中心に進めていくことになると予想される。 本研究の目的のうち、〔2〕原資料の確認と調査(①調査方法の検討、②調査対象の選定、③調査の実施と結果の整理)については、〔1〕の進捗状況を見ながら、可能なところから着手していく。 以上をふまえて、平成26年度においては、あらためて史料としての棟札の特質、特に歴史史料としての価値が高い銘文の客観的な位置づけについて検討し、史料としての課題(問題点や限界性)と、今後の調査・研究に必要な視点や方法を明らかにしていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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