「中央と地方」及び「正統と実力」の統合という、広い時代・地域の政治権力に共有され得る普遍的な課題について、南北朝・戦国の動乱を抱えた室町幕府の下ではどのような固有の動きが見られたのか、室町幕府の禅宗重視に着目して検討した。その結果、「地方」で「実力」を有した在地勢力は、将軍の任命をうけた地方禅宗寺院の住持の信徒となることで、自らの利害保護者として室町幕府を機能させたと解釈できる事例を検出した。彼ら在地勢力は、禅宗の信徒となることで、いわば室町幕府につらなる武士となることを志したのだとすれば、兵農分離の思想史的な検討を再開する手がかりにもなると考えられる。
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