研究課題/領域番号 |
24520758
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山口 輝臣 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (20314974)
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キーワード | 国体 / 教育勅語 / 天皇機関説 / 高山樗牛 / 天皇 |
研究概要 |
前年度に引き続き、国体と仏教というテーマに関わる史料収集を継続した。 具体的には、1)『天皇と宗教』執筆時に若干収集した近代における浄土真宗と天皇との関わりについての史料を補充する、2)日蓮宗系の人びとによる著作類を収集するという二つの作業を中心に、それによって浮かびあがりつつある国体と仏教という問題系の位相を理解するため、3)仏教者以外による国体論についても再検討を加えるための史料収集を行った。 こうした成果を背景に、国体というものを正面に据えた論文「なぜ国体だったのか?」を公刊した。 この論文は、国体について、明治前期と昭和前期とではかなり異なる認識があった点を指摘することからはじめ、その間に起きた変化の様相を考察したものである。これまで本格的に検討の対象とされてこなかった明治中後期の国体に関して、その時期に成立していたのは、「我が国体」に関する曖昧かつ最低限のイメージを共有しながら、各論者がさまざまに「正しい国体」を提示するような言論空間であったと論証することで、従来とはかなり異なる国体像を提示した。これまで発表してきた成果と合わせると、おおよそ19世紀から20世紀中頃までの国体について、その変遷を示せたと考えている。 また学会報告“Rituals and Faith within the Imperial Family”を行った。この報告は、基本的に本研究課題に先立つ仕事の一部の英語版であるが、本研究課題の成果を活かして増訂を行い、より整理されたものとすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国体について、これまでの研究では十分に検討されてこなかった時期について、ひとつの見通しがついたことは十分な成果であったと考えられる。また従来の成果の一端を英語によって発表したことも、今後に向けて大きな意味を持つものだった。しかし一方で、里見岸雄関連史料の収集・分析は十分とは言い難い。以上を勘案し、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果を活かすとともに、追加の史料収集・分析を加えることで、単著を脱稿するという当初の計画通りに研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月に予定していた史料調査が、個人的事情で実施できなかったことによる。 研究の進捗に影響を与えぬよう、次年度の早い時期に実施することで対応する。
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