研究課題/領域番号 |
24520761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉村 豊雄 熊本大学, 文学部, 教授 (90182823)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 文書行政 / 文書管理 / アーカイブス / 稟議制 / 官僚制 / 古文書 |
研究概要 |
本年度の研究成果としては、次年度刊行の『日本近世の地域社会到達形態』(校倉書房)において一応目途をつけた熊本藩の分を示す。本研究を具体化するうえで一つの方法としたのは、「藩政文書の中の地方文書」の存在である。何故に藩政(藩庁)文書の中に地方文書・村方文書が存在しるのか、地方文書・村方文書の存在が、藩領の民政・地方行政の展開のうえでいかなる意味をもつのか、こういう問題関心から、「藩政文書の中の地方文書」の存在形態、機能・位置づけを行った。 熊本藩には、「藩政文書の中の地方文書」が大量に存在する。それも19世紀には地方文書の原物、原文書が大量に存在し、機能している。そこには熊本藩において、地域社会が藩政=領主支配との間でつくり上げた文書御製の到達形態が示されている。それは、簡単に言えば、熊本藩では、18世紀後半以降、藩の民政・地方行政が手永(郡と村の中間の区画)の自律的能力=地域運営能力に立脚する方向で、次第に手永・村からの上申事案の処理を業務とする割合を強め、19世紀には手永からの上申文書を藩庁=中央行政機構における稟議制の起案書に位置づけ、その許認可・行政処理を通じて民政・地方行政に関わる主要な政策を行うという、従来、想像されてこなかった行政段階が到来している。 以上が熊本藩を対象とした成果の一端であるが、全国諸藩の藩政(藩庁)文書と地方文書の関係をみると、藩政文書の中に地方文書・村方文書の原物が存在する藩と、存在しない藩に大別される。次年度以降、この大別作業を行い、本来の課題に迫っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね達成されていると思う。 本研究は、近世社会に胚胎している「近代行政文書」の生成・発展の過程と、明治2年の太政官通達を契機とした行政文書の近代的改変の過程を検証し、近世ー近代移行期の文書行政の流れを提示することにあるが、全国諸藩・幕府の文書行政の状態を見ていくなかで、近代文書行政に最も近かったのが、熊本藩であることを実感した。この熊本藩の成果をまとめ得た・。
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今後の研究の推進方策 |
現在、国文学研究資料館において幕府・諸藩の文書行政・文書管理の研究者と共同研究を行っており、全国諸藩・幕府の状況を掴みながら、当方も計画的に調査し、すでに成果をまとめている熊本藩を比較軸にして、九州の諸藩、中国筋の諸藩、幕府について検討し、最後に明治初年の太政官文書へと検討を展開し、25年度中に研究の大要をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究で、刊本類を中心に全国諸藩・幕府の史料状況について当たりをつけており、次年度は、旅費を中心にした使途構成をとることで、史料の原物を調査し、成果のとりまとめに当たる。
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