研究課題/領域番号 |
24520761
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉村 豊雄 熊本大学, 文学部, 教授 (90182823)
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キーワード | 文書行政 / 文書管理 / 文書革命 / 政策形成 / 稟議制 / 行政 / 地域社会 |
研究概要 |
私は、平成25年10月に、『日本近世の行政と地域社会』(単著、校倉書房)を刊行した。熊本藩を主対象に、前近代、19世紀における日本近世の行政と社会の到達段階・到達形態を実態的に解明したものであるが、第2部「地域社会の政策形成メカニズム」の3つの章(第5~7章)、附章「近世の地域社会と維新変革についての覚書」、とくに第3節「一九世紀の『文書革命』と地域社会到達の形態」、それに序章「本書の課題と構成」、とくに「4 地域社会の文書力と政策形成」、これらは、本研究の研究目的・研究計画にもとづいてまとめたものである。序章を中心に実績を示す。本研究によって調査・研究を進めてきた熊本藩・松代藩・松江藩・山口藩の文書行政・文書管理について、藩庁・藩政文書に入り込んでいる地方文書・村方文書に着目して類型化を試みると、「①一紙文書を中心に標準的な文書行政・文書管理の展開をみる松江藩、②類似した地方文書の存在形態をとりつつ、大きく隔たった文書行政・文書管理の展開をみる松代藩と山口藩、③最も高度化した文書行政・文書管理の展開をみる熊本藩」(『日本近世の行政と地域社会』32・33頁)に類型化できる。熊本藩の到達形態とは、「簡単に言えば、藩の民政・地方行政が、手永(郡と村の中間区域)の自律的能力=地域運営能力に立脚する方向で次第に手永・村方の上申事案を藩庁における起案書として扱い、その審議・許認可・行政処理を通じて民政・地方行政に関わる主要な政策形成を行うという、従来、想像されてこなかった行政段階が到来している」(同上、31頁)と結論できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本近世において熊本藩の文書行政が最も近代文書行政に近い、近代文書行政に継受されうる到達形態にあったことを明らかにした。そして熊本藩における中期藩政改革以降の文書行政・文書管理の展開過程の分析を通して、日本近世における「文書革命」の具体相を提示したところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度が最終年度となるが、本年度は、熊本大学を中心とした共同研究、国文学研究資料館を中心とした共同研究、2つの共同研究の成果が論文集として刊行されるので、これを活かして成果をまとめたい。そして、日本近世に進行した「文書革命」の具体相と、文書革命のどの部分が近代に継承されていくのか、『近世古文書と明治維新』の刊行に近づけていくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度をもって定年退職となっており、退職準備と重なったため、十全の執行ができなかった。 平成26年度は時間的にも十分余裕があり、計画通りの執行に心掛けたい。
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