研究課題/領域番号 |
24520764
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
京樂 真帆子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (00282260)
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研究分担者 |
千本 英史 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (50188489)
岩間 香 摂南大学, 外国語学部, 教授 (50258084)
今 正秀 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (70294270)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 牛車 / 輿 / 平安京 / 都市文化 |
研究概要 |
本研究は、古代・中世のミヤコにおける乗り物文化の実態を解明し、都市の文化構造を明らかにすることを目的とする、文献史学・日本文学・美術史学・考古学による学際的共同研究である。 本年度のテーマは、「『輿車図考』の再検討」であった。これは、文化元年(1804)に松平定信が国学研究の成果として刊行した『輿車図考』の再評価を行うものである。膨大な引用文献データの妥当性や善本研究の成果を反映させた修正作業を行った。「a班:カテゴリー分析担当」・「b班:引用古記録類分析担当」・「c班:引用日本文学資料分析担当」・「d班:引用絵画史料分析担当」・「e班:牛・牛飼童関連史料調査担当」の各班がそれぞれの作業を担当し、個別に分析・検討を重ね、その成果を研究会にて共有した。この研究会は、本年度は2回実施した(9月30日開催予定の研究会は、台風接近のため会場閉鎖となり中止)。 初回研究会(2012年5月4日開催)では、研究分担者、連携研究者の顔合わせと、作業分担の確認を行った。その際、『輿車図考』諸写本の基礎的データや研究文献リストの配付を行い、知識の共有化を図った。 第2回研究会では、「日本の古典偽書について」、「寛政度内裏の承明門と鳳輦」、「牛車研究の世界―『輿車図考』以前―」の3報告が行われた(研究分担者の一名は急病で欠席)。個別作業の成果に留まらず、そこから得た知見や発見が披露された。多分野の研究者が集う学際的研究会ならではの活発な議論が展開した。 本年度は、次年度以降の分析・検討の前提となる基礎作業に集中した。研究会で顔を合わせない期間もメールのやりとりを頻繁に行うことで作業の進行状況を確認し、知識の共有や助言を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「『輿車図考』の再検討」を統一テーマとし、各自で作業を行った。a班は、『輿車図考』の新出写本(早稲田大学図書館所蔵本)の検討と紹介を行った。これは『国書総目録』には掲載されていないもので、この写本を手がかりに『輿車図考』書写の過程復元を行った。つづけて、表題が『輿車図考』とはなっていない写本の存在も発見し、引き続き分析・検討を行っている。また、『輿車図考』作成に至るまでの有職故実研究および国学研究を概観する作業も行った。その結果、『輿車図考』のカテゴリーに変更の必要を認めず、次年度以降の作業は本カテゴリーに沿って行うこととなった。b班は、古記録類の検討を進め、『輿車図考』製作過程の分析を勧めている。c班・d班・e班の作業は遅れ気味であるが、引き続いての作業に期待される。 このように、特にa班の作業の結果、『輿車図考』の再検討は著しく進展したと評価される。また、今年度は報告には至らなかったが、絵巻などの美術資料に見える輿・牛車データの集積や平安京域内での轍や車部材の発掘データの整理などもほぼ完成している。 その一方で、本研究分野は、従来ほとんど手つかずの状態にあったため、その前提となる史料の基礎的分析が膨大な作業量となっている。たとえば、a班は、『輿車図考』の諸写本を検討する中で、従来知られていなかった写本の存在を複数発見し、その成果を分析・吟味するのに時間を取られている。そのため、a班では次年度も昨年度の作業を引き続き行うことになった。当初予定の作業と並行して進めていかねばならない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、計画に沿って研究を推進していく。今年度の作業量が予想以上に多かったため、次年度作業への影響は否めない。しかし、単なる史料紹介に終わらない研究にするためには、新たな史料追加作業が必要となる。それが、次年度の課題「『新・輿車図考』構築のための作業」である。この作業は次年度・次々年度の2ヶ年計画である。最終年度へ向けて、着実に進めていきたい。 また、今年度は実現できなかったゲストスピーカーによる研究発表も実現したい。本年度は候補者の日程が合わず、見送ることになった。次年度は早めの日程調整を行い、実現させたい。 さらに、史料閲覧も実施したい。個別作業の中での史料閲覧は行っているが、共同研究ならではの共同閲覧を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に、当初予定通りの計画で進めていく。年3回程度の研究会の開催を共同作業とし、通常作業は各自で史料収集・分析・検討をおこなっていく。特に、次年度は、データ処理作業の増加が見込まれ、人件費の手当てをしていくことになる。また、史料閲覧を共同で行うための旅費も必要となる。さらに、ゲストスピーカーを招くための旅費と謝金も必要である。 なお、d班は、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、本年度の研究費も含め当初予定通りの計画で進めていく。
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