研究課題/領域番号 |
24520769
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
小林 和幸 青山学院大学, 文学部, 教授 (00211904)
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キーワード | 貴族院 / 帝国議会 / 多額納税者議員 / 幸倶楽部 / 勅選議員 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、研究課題「貴族院議員の政治的基盤に関する研究」を進めるにあたり、勅選議員の政治的な立脚点の解明や多額納税者議員の政治活動を解明する基礎作業を進めた。 具体的には、貴族院内の会派活動記録の分析や、従来から進めている香川県選出の多額納税者議員鎌田勝太郎の関係史料につき整理し目録作成の作業を行った。これにより、現在までに約1500点の史料を整理した。次年度も引き続き継続して史料整理を進めるが、現時点における整理史料の中には、請願書や意見書などを多数見いだすことができ、大正期の貴族院に対する政治的な期待を検討し得ると考えられる。さらに愛知県、高知県などにおいて、多額納税者議員の関係史料について所在調査を行った。 また、貴族院の政治会派の内、「幸倶楽部」について会派の沿革を検討し、尚友倶楽部所蔵の史料『幸倶楽部沿革日誌』を尚友倶楽部史料調査室と共編にて刊行した。同書には「『幸倶楽部沿革日誌』から見る明治・大正の貴族院会派」を掲載した。同論文では、『幸倶楽部沿革日誌』に記載されている、幸倶楽部内で行われた各種の会合、政務調査の概略、幹部人事の推移を検討分析した。それにより、幸倶楽部が「立憲主義」を権力制限の観点から解釈する考え方により政党内閣に批判的な理念で結成されたものであること、また明治末年頃に貴族院内で最大勢力に成長したが、政党勢力が伸長する大正期には、幸倶楽部と貴族院内の他会派との対立を経て、貴族院内会派の再編へと進む実態を明らかにした。 貴族院の勅選議員関係史料については、元老の西園寺公望周辺の人物について史料調査を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、貴族院議員(華族議員、勅選議員、多額納税者議員)の政治活動を、その活動の背景となった「政治的基盤」と関連づけて検討しようとするものであり、今年度は、それぞれについて以下のように研究を進めた。まず多額納税者議員については、「鎌田勝太郎関係文書」について史料整理を進展させることが出来た。また、勅選議員について、その多くが所属した「幸倶楽部」の沿革を検討し、幹部人事などの分析を進める作業を継続して行い、そうした幹部について政治的基盤の分析の進展をはかった。 また、華族議員の史料についても国立国会図書館憲政資料室所蔵史料調査を進めることが出来た。 以上の理由から、研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。今後も、収集した史料による貴族院議員の分析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、各史料所蔵機関において関係史料調査、収集を進める。 多額納税者議員については、引き続き「鎌田勝太郎関係文書」の調査及び目録作成を行う。さらに、高知県、岐阜県、福岡県等の多額納税者議員関係史料の収集も併せて行う。 有爵者の貴族院議員関係史料、官歴を主たる「政治的基盤」とする貴族院議員についても、有力会派の史料の分析により、官歴などのデータベース化を進めていく。同時に、勅選議員の推薦過程を個別事例により検討する。 また、明治期の貴族院について、衆議院の政党との関係を勘案して「立憲主義」を如何に捉えているかという点から、政治的位置付けの再検討を行う。さらに大正期の貴族院がせまられた改革について、議員の「政治的基盤」による見解に注目した分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
史料収集をコピーや写真撮影及び紙焼きによって行う予定であったものを、史料をデジタル写真撮影しデジタル画像のまま、分析することができたため、その分の経費を使用する必要が無かったことなどのため。 史料整理継続中の香川県坂出市「鎌田勝太郎関係文書」の調査、岐阜県や高知県などの多額納税者議員関係史料調査を行うための出張旅費、及び地方における有爵議員関係史料所在調査を行うための出張旅費、その史料整理に必要な物品費などに使用する。 さらに国立国会図書館憲政資料室所蔵未刊文書の調査、国立国会図書館法令議会資料室所蔵「請願文書表」等の調査、外務省外交史料館、宮内庁宮内公文書館、その他史料所蔵機関における貴族院議員関係史料調査により必要となる史料収集費及び関係図書購入費として使用する。 また、特に収集史料の整理と解読及びデータ化のための研究協力者に対する謝金として研究費を使用する予定である。
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