研究課題/領域番号 |
24520769
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
小林 和幸 青山学院大学, 文学部, 教授 (00211904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 貴族院の会派「懇話会」 / 幸倶楽部 / 茶話会 / 無所属派 / 花房崎太郎 / 鎌田勝太郎 / 貴族院事務局 |
研究実績の概要 |
今年度は、当該研究課題を進展させるため、昨年度に引き続き、貴族院多額納税者議員の史料調査を行った。特に香川県選出の多額納税者議員鎌田勝太郎について、香川県坂出市鎌田共済会郷土博物館に於いて史料整理ならびに目録作成を行った。その際、最初の政党内閣である「隈板内閣」の成立に関わる貴族院会派の動向を示す史料を見いだしたので、「隈板内閣の成立と貴族院会派」(『法律時報』1095号)ならびに「明治31年憲政党成立前夜の貴族院会派『懇話会』」(『法律時報』1096号)として史料紹介を行った。これらの史料紹介では政党内閣に対する貴族院の対抗的姿勢が強調される従来の理解に一石を投ずることができたと考える。また、岡山県選出の多額納税者議員坂野鉄次郎について、現地に赴いて坂野家史料の所在調査を行った。その他、岐阜県選出多額納税者議員の収集史料についても分析を進めた。 また、貴族院事務局につとめ、貴族院の社交団体幸倶楽部(貴族院内会派「茶話会」と「無所属派」で構成される)の書記を長く務めた花房崎太郎の関係史料について、ご子孫から借用し、その整理、分析を行い「花房家所蔵『花房崎太郎関係文書』目録並びに解題」(『青山史学』34号)を執筆した。この史料群は、150余通の書翰と日記、幸倶楽部の会計記録等からなる。書翰からは貴族院議員から貴族院事務局への依頼の内容、書類からは、幸倶楽部が議案の賛否を所属会員に依頼する実態といった幸倶楽部の活動の一端等を明らかにすることが出来る。この史料群は、今後の研究者への公開を目指しその準備を進めている。 そのほか、貴族院の政治基盤を考察しながら、それが実際の政治的活動に如何に反映されるかについての検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、貴族院議員の政治的基盤が如何に議会活動に影響を与えているかを考察することを目的としているが、本年度は、研究計画にそって、多額納税者議員の史料調査を行うことにより、個別的に政治基盤を追究し、成果の一端として史料紹介を行うなど、その政治的な活動を考察することが出来た。また、貴族院事務局につとめ、貴族院の政治会派に精通していたと言われる花房崎太郎の関係文書を見いだしたことにより、今後の貴族院研究の進展にある程度貢献出来たものと思われる。 以上の理由により、おおむね順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の多額納税者議員の関係史料の調査、整理を進め、その政治的基盤と政治活動の関係を、さらに追究すると共に、重要史料について紹介を行い、また調査整理した史料のデータ化・目録化を推進して、幅広い利用に供する準備を行う。 貴族院議員の政治的基盤の検討により、それが政治活動に如何に影響するかなど、昭和期の貴族院で論議された、いわゆる「天皇機関説排撃問題」を事例として考察する。また、貴族院議員の政治基盤と関連して、貴族院内外の人物が連携して政治目標の達成を図ろうとする事例を明治期の貴族院を中心に考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料収集にあたり、デジタル写真撮影による収集を行ったため収集費が安価に済んだことが大きな要因であり、作業の効率化により、謝金による研究協力を今年度は依頼せずに研究を進めることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
香川県を中心とする多額納税者議員の史料所在地に於ける史料調査、現地調査を行い、また貴族院議員関連史料の収集費に使用する。また研究成果の公表等を行うために使用する予定である。
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