研究課題/領域番号 |
24520770
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上野学園大学 |
研究代表者 |
櫻井 利佳 上野学園大学, 付置研究所, 研究員 (80622571)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小右記 / 藤原実資 / 雅楽 |
研究概要 |
本研究は、雅楽の最盛期である中古から院政期にかけての音楽の実態調査を目的としている。具体的には『小右記』『中右記』を対象として、音楽記事を抽出し、年譜を作成することを最終目的とする。本年度の予定は、①『小右記』諸本の書誌調査、②本文研究、③音楽記事集成の作成を行うこととした。 本年度は、大日本古記録『小右記』(岩波書店)により音楽記事の採取およびデータ入力を進め、音楽記事略本系の宮内庁書陵部蔵伏見宮家旧蔵本と、広本系の諸本を対象に本文批判を行い、た。 記事の採録にあたってみると、法会については、当初の予想以上に次第を詳細に記している記事が多く見られた。よって、後に記事を年譜化した際に、法会における音楽の在り方の変遷を辿れること、また法会全体に音楽的所作が含まれた可能性をも考慮し、法会の次第ほぼ全体を採るようにした。その為、直接音楽との関わりを認められない文言を多く含める結果となった。 以前より古記録が記主の個性、社会的立場によって記事の性格も多様であるとは認識していた。さらに今回の精査によって、『小右記』のような後の規範として伝来したものについては、伝来の過程、すなわち目録化や記事の省略の在り方にも用途等の事情を反映している可能性を考慮すべきことに気づいた。音楽記事について、広本、略本それぞれの記述内容の傾向を意識しながら作業を進め、研究に発展させるようにしたい。 次年度は、本年度に実際に史料に接して作業を進め、調整した方針を踏まえ、『中右記』の音楽記事についての調査を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音楽記事採取の際、特に法会に関わる記事のどこまでを音楽記事と認めて採取するかという問題について、たびたび調整と統一の必要が生じ、予想より大幅に時間を使ったことや、略本と広本との異同が大きく、両者の性格の違いを考慮しつつ対校する方法を模索する時間を必要としたこと、異体字の使用が多いために入力アルバイトが予想より漢字読解に時間を要したため、予定より遅れを生じた。いずれも予備調査の段階では予測しきれなかった。 遅れについては、次年度の作業時間、入力アルバイトの時間増加等によって可能な限り解消する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)平成25年度は24年度に引き続き、『小右記』記事集成の作成、対校を続ける。 2)一方で、『中右記』の書誌調査を開始する予定である。 3)また、平成26年度の報告書作成に向けて、書式を決定し、文字入力作業をより充実させていく。諸本の性格の違い、年代の経過とともに儀礼、音楽が変容する様子を、可能な限り年譜や記事集成からも読み取れる方法を模索しながら、資料の充実を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)平成25年度は24年度に引き続き、諸本のうち重要な写本と認められたものについて、文献の所蔵機関に赴き、撮影および複写を行う。このための交通費および複写費用として研究費を使用する。 2)また、これと並行してアルバイトを雇用し、文字入力作業を進める。
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