研究課題/領域番号 |
24520771
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
耒代 誠仁 桜美林大学, 総合科学系, 講師 (00401456)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 字形検索 / 古文書解読支援 / パターンマッチング / ユビキタスコンピューティング |
研究概要 |
2012年度の研究業績については、情報処理学会より「山下研究記念賞」を受賞するなど外部からの評価も含めて順調と考えている。 「破損字体検索技術の高度化」と「高精度画像処理技術」の実現については、字形の距離画像化と異方性拡散技術を組み合わせたノイズ除去・字形平滑化のための技術を開発した。字形を構成する筆跡(ストローク)には運筆方向への連続性が見られる。一方で、ノイズにはこのような連続性が見られない。この差を利用して、木簡表面の経年変化などに起因する字形の掠れ、欠損などを補完しつつ、連続性の存在しない孤立点を削除しつつ、字形画像上には現れない情報を可視化できるのが本技術の特徴となる。この技術は、経年変化によって不明瞭となった字形そのものを復元するものではない(字形の「復元」をコンピュータで行うことは本研究の目的ではなく、またその意義について何ら見出すものでもない)が、不可視となった運筆の情報を復元する行動は人間が文字を読む際に無意識のレベルで働く機能である。それをコンピュータ上に実装し、パターンマッチング技術とデータベース技術を組み合わせることで、より人間の感覚に近い字形検索技術を提供することが可能になる。また、ノイズ除去・字形平滑化の際のパラメータをユーザが変更可能であり、この技術を利用した「絞り込み検索技術」についても同時に提供することができる。 「スケーラブルなハイブリッド情報検索インタフェース」については、Android端末をターゲットとした類似字形検索システムのプロトタイピングを行い、その動作可能なシステムを学会発表の場で公開した。Androidは多数のタブレット型携帯端末で利用されるOSであり、これまでのWindows上で動作するシステム(Mokkanshop)に加えてより多くのユーザに、またより多くの場面で字形検索の技術を活用してもらえるようになると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破損字体検索技術の高精度化に関しては、計画に準拠した活動を完了することができたと考えている。まず「ストローク形状特徴抽出/パターン類似土計算方法の改善」については距離画像化と異方性拡散を組み合わせた技術で達成することができた。次に「時代/用途によって変遷/変化する異体字」の整理についても、東京大学史料編纂所の協力によりデータベースを構築することができた。なお、このデータベースをAndroid端末での類似字形検索システム(プロトタイプ)の実装に利用し、その動作を研究会で公開している。 高精度画像処理技術についても、距離画像化と異方性拡散を組み合わせた技術によって達成できたと考えている。ノイズ除去と不可視となった運筆情報の可視化により、これまで以上にユーザフレンドリーな解読支援技術が実現できたと考えている。 絞り込み検索技術についても、類似字形検索/画像処理に関する各種パラメータをユーザが変更可能な実装によって実現できていると考えている。ただし、現状はパラメータの設定項目数が十分に整理されていない。この点については次年度以降にブラッシュアップを図りたいと考えている。 スケーラブルなハイブリッド情報検索インタフェースでは、Android端末向けの類似字形検索システムのプロトタイピングにおいて、パターンマッチング処理をサーバ側で担う負荷分散型システムの実装を行った。Android端末は特にメモリ使用量/アクセス速度の制限が大きく、検索システムのコア一式を端末側で賄うことができない。そこで、サーバ側にテンプレート管理・類似度計算の処理を実装し、Android側ではメモリへの負荷が少ない処理のみを実行することで、検索に要する時間を数分から数秒に短縮することができた。 なお、これらの成果に関する研究発表(論文+口頭発表)により、情報処理学会「山下研究記念賞」を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究はおおむね順調に進展しており、25年度以降についても当初の計画通り実施していきたいと考えている。なお、次年度の研究費については発表を行った学会・研究会の当初予定からの変更、物価変動など幾つかの要因が累積した結果であるが、研究計画そのものの大きな変更を表すものではない。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額となった研究費については「スケーラブルなハイブリッド情報検索インタフェース」の動作検証に必要となる機材等の拡充に利用し、研究品質の一層の向上に役立てたいと考えている。
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