本研究課題の最終年度となる2014年度については、様々なコンピューティング環境で利用可能なスケーラブルな字形検索サービスの実現に向けて、そのインフラとなるクライアント・サーバ方式の情報検索システムの実現に注力した。膨大な情報を検索対象とする必要がある字形検索サービスでは、入力された字形とデータベース化された字形の比較を高精度に行うために大きな演算量/記憶量に耐える実装が不可欠である。しかし、携帯性を重視した多くのコンピュータにおいて、スタンドアロンベースで提供できる計算量/記憶容量はこれに及ばない。そのため、現時点においてはクライアント・サーバ方式が最も現実的な実装となる。研究代表者らは、マルチスレッドにより複数のトランザクションを並列処理可能な字形検索サーバを実現した。このサーバには、研究代表者らがこれまでに実現したグレーゾーン法、勾配特徴評価など字形類似度評価技術をすべて搭載した。このシステムは、当初は負荷分散の実現を目指したものであった。しかし、オンデマンドで字形情報の登録/削除が可能なリモートコマンドを追加実装することで、古文書の研究者が研究成果である字形情報を迅速に共有する知の共有インフラストラクチャーの提供にもつながった。今後は、実現した字形検索サーバを核とした多様なアプリケーションの実現が期待できる。この他に、デジタルアーカイブの拡充作業にも参画し、検索可能な古文書の範囲拡大にも努めた。
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