研究課題/領域番号 |
24520772
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
森 暢平 成城大学, 文芸学部, 准教授 (20407612)
|
研究分担者 |
瀬畑 源 一橋大学, 社会(科)学研究科, 特任講師 (10611618)
河西 秀哉 神戸女学院大学, 文学部, 講師 (20402810)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 象徴天皇制 / メディア / 皇族 / 宮内庁 / 皇后、皇太子妃 / 皇室像 / 宮内記者 / ジャーナリズム |
研究概要 |
当該年度(平成24年度)はまず、藤樫準二旧蔵文書の全体像の把握を行うことが目標であった。目録作成、日本新聞博物館所蔵の藤樫資料の保存状況の確認、元共同通信記者・故高橋紘氏の遺族に対する資料保存現状調査は終わり、『毎日新聞社報』等の新聞社関連資料、新聞業界の内報(業界紙)の調査などはかなり進んだ。 こうした成果をもとに3人とも自らのテーマの研究を深め、それぞれが象徴天皇制研究会において発表を行ったほか、成果の一部はすでに論文となっている。 森は、明仁皇太子と美智子妃との成婚時のメディアとその受容の研究を進めた。特に新生活運動と関連付けて「御成婚」ブームを論じる発表を行い、民間レベルでの生活改善の意識の高まりが、メディアを通じた「ご成婚」の表象とシンクロし合ってブームを盛り上げたことを解明した。このテーマについては、秋に論文となり印刷される予定である。瀬畑は、昭和天皇巡幸とメディアについての研究を進めており、特に地域レベルでの報道と人びとの皇室像形成についての発表を行った。このテーマについても秋に論文となり印刷される予定である。瀬畑はさらに、宮内省から宮内庁への転換についての論文を執筆ずみであり、現在校正作業中となっている。河西は、「皇族の表象」についての発表を行い、象徴天皇制下の新たな「藩屏」がどのような形で創出したかの発表を行っている。このテーマについは秋に論文として印刷される。河西はさらに2本の論文が発表済みである。「敗戦後における皇后イメージ」(『女性学評論』第27号、2013年3月)においては、香淳皇后の戦後の表象の変遷、「近現代天皇研究の現在」(『歴史評論』752号、2012年12月)においては、戦後象徴天皇制およびとメディア史研究の前提となる近現代天皇制研究動向を整理した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度(平成24年度)の計画のうち、達成されたものは、藤樫準二旧蔵文書の全貌把握のための目録作成、日本新聞博物館所蔵の藤樫資料の保存状況の確認、元共同通信記者・故高橋紘氏の遺族に対する資料保存現状調査、『東京日日新聞社報』『毎日新聞社報』など新聞社関連資料、『新聞及新聞記者』『文化通信』『新聞研究所報』など戦前戦後の新聞業界の内報(業界紙)の調査である。 達成されなかったものは、米国メリーランド州にある米国立公文書館での調査である。この調査については3人の日程が合わなかったため当該年度は実施できなかったが、次年度(平成25年)8月に実施することが決まり、すでに航空券の手配済みである。 また、各自が担当する文書の調査報告会についても予定通り、定期的に開いた(当該年度3回)。 論文作成については、河西が「近現代天皇研究の現在」(『歴史評論』752号、2012年12月)、「敗戦後における皇后イメージ」(『女性学評論』第27号、2013年3月)の2本を書いている。 全般的に、米国での調査実施を除いては、順調に進み、特に、河西2本の論文が執筆されていることが、研究の進展を示しているといえよう。森、瀬畑の2人も、調査報告会にて、かなりの完成度で報告しており、平成25年度後半には、その成果が論文となる見込みであり、こちらの進展もかなり順調といってよい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は象徴天皇制/象徴天皇像が形成・変容・定着する過程における皇室記者およびマスメディアの役割解明である。藤樫文書の全容解明は進みつつあるが、見えてきた課題は、藤樫という人物だけにこだわるのではなく、メディアと皇室に関係する事象を広く見据えながら、象徴天皇像創出、変容の過程を明らかにすべきであるということである。したがって、今後も新資料の発掘につとめ、場合によっては存命の皇室記者への聞き取りインタビュー調査を行いながら、研究を進める方針を確認している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に実施できなかった事項は、米国の国立公文書館での調査である。皇太子の「御成婚」後の訪米とその米国内での報道、戦後の皇族とGHQの対応などが、アメリカで研究すべき課題であり、本年夏に、着実に調査を進めたい。
|