平安期の荘園は、「免田・寄人型荘園」概念によって、特定の田地と人の支配に限定された未熟な荘園と捉えられてきたが、実際には多くの荘園で領域が存在し実質的な領域支配が実現し、実質的な「領域型荘園」がすでに広汎に成立していた。それに対して展開されていく臨時雑役の賦課や一国平均役賦課は、荘園・公領の空間的分離を前提としたものではなかったことを明らかにした。以上から「免田・寄人型荘園」概念は荘園に対する国家的賦課の免除の側面のみをみたもので、この段階の荘園の実態を示す概念としては不適当であること、そして「領域型荘園」概念については、より実体的な領域支配に注目して捉え直していくべきことを明らかにした。
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