研究課題/領域番号 |
24520776
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
加納 寛 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30308712)
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キーワード | 国際情報交換 / 国際研究者交流 / タイ |
研究概要 |
平成25年度の大きな成果としては、これまでの戦時期日本のプロパガンダ研究においてはほとんどわかっていなかった、プロパガンダの受け手となった側の政府や人々の反応が、タイ政府公文書館における史料調査によって明らかになったことである。 具体的には、1940年から45年にかけての日本からのプロパガンダへのタイ側における反応について、バンコクに出張してタイ国立公文書館等における史料調査によって調査を実施した結果、当時の日本はタイにおいて活発な宣伝活動を展開しており、タイ政府はそれに対して宣伝局に命じて監視させるなど大いに警戒し、中央・地方ともに消極的妨害行為を行っていたことが、明らかになった。また、日本側の宣伝工作は、本研究課題で中心的に扱っている印刷物宣伝のほか、映画宣伝や写真展示宣伝を活用し、多くのタイ人見物客を惹き付けていたことが明らかになった。 これらの成果については、「日本の宣伝活動に対するタイの反応:1942‐43」(中国現代史研究会『現代中国研究』第33号)および「戦時期バンコクにおける日本側活動の空間的特性:1942~43年の宣伝活動を中心に」(日タイ言語文化研究所『日タイ言語文化研究』第2号)において公表することができた。これらは、従来の研究では必ずしも明らかにはなっていなかった宣伝の受け手側の反応や、宣伝活動の空間的特性を浮かび上がらせた点で、大いに重要な成果であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイにおける史料調査によって、日本側のプロパガンダがタイにおいてどのように受け取られたかについて明らかにすることができ、計画通りその成果を論文として公表することができた。研究は、おおむね順調に進展しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
日本側のプロパガンダに対するタイ側の反応が明らかにできた一方で、日本が発行したタイ語プロパガンダ誌で撮影複写・整理をすべきものはまだ多く残されている。とくに日本カメラ博物館に多く所蔵されている『カウパアプ・タワンオーク』は、精査する必要があり、平成26年度前半においては同誌の撮影複写を集中的に実施し整理を行う一方、アメリカ等に所在する史料の閲覧を実施する。年度後半においてはタイ語プロパガンダ誌についてのデータベース化の完成、およびウェブでの公表作業を実施し、本研究課題のひとまずの成果を公表・還元していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
とくに旅費について、関係史料を所蔵しているアメリカ等への出張が日程的な困難によって平成25年度中に実施できなかったことによって、次年度使用額が生じた。 平成26年度においては、日本カメラ博物館での撮影複写作業のため、頻繁に国内旅費を使用する。また、アメリカ等の関係史料所蔵機関に出張するため、海外旅費を使用する。それらの出張によって入手・整理した史料のデータベース化およびウェブへの公表作業について、人件費・謝金を使用するとともに、成果の公表のために報告書印刷費を執行する。
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