この研究では、戦時期の日本によるタイ語プロパガンダ誌を体系的に収集し、記事や企業広告のデータベースを作成し、数量的にその傾向を捉えることによって、日本側がタイの人々に対して、軍事・科学・産業の先進性といった面をアピールしようとしていたことが明らかになった。また、タイ政府宣伝局史料からは、日本が無理をして製作したタイ語プロパガンダ誌は、タイの人々の関心を一定程度集めることには成功したが、これらの配布や販売はタイ政府側の警戒を招いたことがわかった。こうした日タイ両面からの史料収集と分析によって、従来は明らかになっていなかったプロパガンダをめぐる両国の関係性やその変化を明らかにすることができた。
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