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2013 年度 実施状況報告書

異宗教の相剋により生じた社会現象の比較史的研究―古代仏教説話に見る伝統と革新

研究課題

研究課題/領域番号 24520779
研究機関立命館大学

研究代表者

本郷 真紹  立命館大学, 文学部, 教授 (70202306)

研究分担者 山本 崇  独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (00359449)
毛利 憲一  平安女学院大学, 国際観光学部, 准教授 (00425026)
キーワード日本霊異記 / 仏教史 / 宗教史 / 日本古代社会
研究概要

本研究では神仏習合のあり方を中心に、日本古代社会のおける伝統的価値観・信仰と、外来宗教である仏教的な価値観・信仰との関係について、特に神祇信仰と仏教との融合(神仏習合現象)を中心に考察し、仏教思想の伝播が社会に与えた影響を明らかにすることを目的としている。前科研費採択課題を発展的に継承し、仏教思想の伝播が古代の地域社会に与えた影響とその歴史的意義を明らかにし、日本古代社会の宗教的特質を解明したいと考える。
2年目となる平成25年度は、『日本霊異記』の検討を中心に、定期研究会を11回開催した。今年度は『日本霊異記』下巻を検討し、分担者・協力者による下巻本文の校訂と内容検討についての発表を行い、下巻全体のほぼ半数の説話の検討を終えることができた。これと並行して、分担者である山本を中心として、『日本霊異記』上巻注釈書の刊行準備を進めた。そのための検討会を10回程度開催した上で入稿し、出版元とも作業を進め、平成26年度内の刊行に目途を付ける段階にまで至った。
また調査旅行を1回開催し、山岳信仰と仏教の関係が強く残り、神仏習合現象を捉える上で重要な地域である富山県立山周辺を寺社(雄山神社・日石寺等)を中心に踏査し、また富山県立山博物館学芸員の協力を得て、立山博物館の見学及び周辺の宗教施設の踏査を行った。この他に、奈良県を中心とする古代寺院や遺跡および『日本霊異記』故地の調査を5回程度行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)『日本霊異記』中巻の検討を終え、下巻の検討へと進んだ。検討した下巻収録説話は奈良時代後半を背景としたものが多く、当該期の平城京の僧尼・官人層や地方の民間における仏教受容を考える上で重要な説話群である。これらの検討を通じて、古代社会における仏教受容のあり方の一端を捉えることができた。
2)『日本霊異記』上巻注釈書刊行準備を通じて、『日本霊異記』の諸写本に関する書誌学的知見を深めることができた。注釈書の刊行にあたっては、翻刻の精度を上げるため、写本のチェック、内容の確認等に多くの時間がかかったため上巻の刊行が遅れているが、内容を精査することができたため、充実した内容を持つ注釈書の26年度内の刊行に目途を立てることができた。
3)調査旅行では上記の通り、立山周辺の仏教関係の遺跡等を踏査したが、山岳信仰と仏教の習合的現象の痕跡を間近に実見することができ、また現地の学芸員からの説明を受けることで、研究課題に対する知見を大いに深めることができた。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、研究計画に基づき、前年度の研究体制・組織で以下の作業を進める予定である。①『日本霊異記』下巻の検討を引き続き行う。そのための定例研究会をほぼ12回開催する。②『日本霊異記』上巻の注釈書の最終仕上げを行い、刊行する。また中巻については原稿を整理し、刊行準備を進める。③異宗教の相剋により生じた社会現象の比較史的研究を進め、その研究成果を定期研究会や外部の学会・研究会等で発表し、成果を公表する。④昨年度故地調査を、奈良県を中心に多く行ったこともあり、今年度については、上巻刊行の進捗状況を見ながら、可能であれば吉野地域への調査を行う。⑤古代日韓関係史を専門とする洪潤基先生(韓国・脳科 学教育綜合大学院大学校碩座教授)を招いて研究会を開催し、東アジア史的視野からの仏教受容史の比較史的研究のための知見を深める。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は、『日本霊異記』上巻注釈書刊行にあわせて、必要な作業・業務委託料などを見込んでいたが、刊行作業が遅れたため、その分を全て執行できなかった。それらは2014年度前半に執行の見込みである。また『日本霊異記』上巻注釈書刊行に向けての作業に思いの外時間を取られ、それに伴い、中巻注釈書刊行への作業が進められなかったこともあり、そのための作業に必要な史資料・文献、物品の購入や原稿入稿作業に必要な経費の執行ができず、次年度使用額が生じた。
平成26年度も、代表者・分担社共に、適正な研究費執行に努める。以下の計画で研究費を執行する予定である。①研究を進める上で必要な史資料・文献、『日本霊異記』の校訂・注釈を進める上で必要な工具書類・関係文献・写真紙焼き等の購入、②研究会への参加、調査旅行の旅費、③その他、研究に必要な備品・消耗品の購入、④研究協力者等への日当、アルバイト謝金、⑤韓国の研究者を招聘しての研究会開催を計画しており、研究者招聘のための旅費。なお平成25年度から引き続いだ研究費については、『日本霊異記』上巻の仕上げ作業及び中巻注釈書刊行に向けての原稿の集積、体裁の調整・統一、校訂・注釈を進める上で必要な作業(文献・地図、古辞書類の確認等)に充てる。中巻注釈書に係る作業は25年度内から始める予定であったが、上巻の刊行作業を受けて、開始が遅れている。平成26年度は計画・管理を見直し、確実な作業の進捗に努める。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 「近年の木簡調査研究の動向」2013

    • 著者名/発表者名
      山本崇
    • 雑誌名

      『考古学ジャーナル』

      巻: 649号 ページ: 9-13

  • [雑誌論文] 「右京七条一坊・朱雀大路の調査―第168-9次」2013

    • 著者名/発表者名
      山本崇・高橋透〈宮城県多賀城跡調査研究所〉(共著)
    • 雑誌名

      『奈良文化財研究所紀要2013』

      巻: - ページ: 106-107

  • [雑誌論文] 「一九七七年以前出土の木簡(三五) 奈良・今井町環濠」2013

    • 著者名/発表者名
      山本崇
    • 雑誌名

      『木簡研究』

      巻: 35号 ページ: 138-139

  • [雑誌論文] 「本誌未掲載出土事例略報(二) 新潟・小木城下館跡」2013

    • 著者名/発表者名
      山本崇
    • 雑誌名

      『木簡研究』

      巻: 35号 ページ: 156

  • [雑誌論文] 「書評 高島英之著『出土文字資料と古代の東国』」2013

    • 著者名/発表者名
      山本崇
    • 雑誌名

      『日本歴史』

      巻: 787号 ページ: 107-109

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「『日本霊異記』を歩く」2013

    • 著者名/発表者名
      山本崇(単著)
    • 雑誌名

      コラム作寶樓

      巻: - ページ: -

  • [学会発表] 「2013年全国出土の木簡」

    • 著者名/発表者名
      山本崇
    • 学会等名
      木簡学会第35回研究集会
    • 発表場所
      奈良文化財研究所(奈良県奈良市)
  • [学会発表] 「木簡を広げる―古代以外の、さまざまな地域の木簡」

    • 著者名/発表者名
      山本崇
    • 学会等名
      奈良文化財研究所東京講演会「歴史の証人 木簡を究める」
    • 発表場所
      有楽町朝日ホール(東京都千代田区)
  • [図書] 『埋蔵文化財ニュース第154号 全国木簡出土遺跡・報告書綜覧II』2014

    • 著者名/発表者名
      奈良文化財研究所埋蔵文化財センター編(責任編集・山本崇)
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      奈良文化財研究所
  • [図書] 『飛鳥藤原京への道』(飛鳥資料館図録第59冊)分担執筆・山本崇(単著)「官道の整備と外国使節の往来」2013

    • 著者名/発表者名
      奈良文化財研究所飛鳥資料館編(相原嘉之・石橋茂登・黒坂貴裕・桑田訓也・丹羽崇史・森川実・森先一貴・廣瀬覚・山本崇共著)
    • 総ページ数
      58(17‐22)
    • 出版者
      奈良文化財研究所
  • [図書] 『週間朝日百科 新発見!日本の歴史―12号 女帝と「怪僧」の人物像』分担執筆・山本崇(イラスト監修・解説)「称徳朝の御斎会 天平神護3年(769)正月8日―宮の中枢空間大極殿が仏堂へ一変」2013

    • 著者名/発表者名
      丸山裕美子編(小口雅史・飯田剛彦・飯沼賢司・石田実洋・梶原義実・上川通夫・関尾史郎・成瀬正和・野尻忠・松崎照明・丸山裕美子・三谷芳幸・山本崇・吉田一彦共著)
    • 総ページ数
      39(8‐9)
    • 出版者
      朝日新聞出版

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公開日: 2015-05-28  

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