平成26年度は、2014年4月~2015年3月にわたって、「長命茂兵衛家文書研究会」を計14回開催し、前年度に引き続き、「長命茂兵衛家文書」を保管する京都府立山城郷土資料館において調査研究・整理作業に当たった 研究会においては、文書全点について、①釈文(翻刻)及び目録の最終確認、②公開用画像データの撮影、③撮影済み画像データの加工、④解題作成とそれに伴う調査研究、⑤保管整理作業、⑥文書群の1つである「三番叟面」1面の修復を中心に研究活動を行った。参加メンバーは、長田あかね(研究代表者)・岡井毅芳(研究協力者)・渡邊美秀子(同)・金子千沙(同)の4名である。また、④のうち音曲系の文書の解題を高橋葉子氏(研究協力者)、⑤の「三番叟面」の解題を見市泰男氏(同)が担当し、同文書の研究史の概要について山路興造氏(同)が執筆した。その他、前年度に引き続き、参考文献の収集および同目録の作成を長田が行った。なお、研究成果の公開については、平成27年5月に同文書の目録を冊子媒体で発行する。さらに、平成27年度中に、日本芸能史専門の学会誌『藝能史研究』に釈文を掲載予定であり、別に解題・論考・参考文献目録等を収録した冊子媒体での発行を目指している。 以上の作業を含め、研究期間全体を通して、本研究で目標としていた、同文書全点の書誌データの採取、目録・釈文・画像データ・解題の作成、「三番叟面」の調査データの作成、参考文献の収集と同目録の作成を達成し、まだ論文の形にはなっていないが、同文書の分析および年預の活動実態の解明に関する研究も行った。同文書は、近世の南都両神事能(興福寺薪能と春日若宮祭能)において重要な役割を果たした年預に関する、ほぼ唯一のまとまった文書群である。本研究によって、初めて同文書全体の徹底した調査・分析が行われ、全面公開への道筋をつけるに至った意義は、研究史上きわめて大きいと考える。
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