研究課題/領域番号 |
24520783
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大谷 渡 関西大学, 文学部, 教授 (80340644)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 日本史 / 近現代史 / 日台関係史 |
研究実績の概要 |
前年度の研究成果の上に立って、夏に台南と台北において資料収集を行った。台南では、戦中に東京に留学し戦後は台湾長老教会牧師として先住民伝道に力を注いだ高俊明への聞き取り調査を行い、その人生の軌跡を記録化した。高俊明は、終戦の年に青山学院中学校に在学していて、勤労動員と東京空襲の体験者であり、終戦の翌年に故郷の台南に帰ってみると、米軍による台南大空襲で実家は完全に破壊された状態であった。 台北では、戦後大陸から台湾に渡った曹佩芳への聞き取り調査を重ね、台湾海峡危機の時の家族の様子や軍人家族村での生活などを明らかにすることができた。 秋には、1950年代に台湾から日本に留学した姉妹2人の足跡を追って、瀬戸市での実地調査と聞き取り調査を行った。その結果、国共内戦時に大陸から台湾を経て来日したペンテコステ派宣教師キーステン・ハーゲンの尾張瀬戸での伝道の詳細と、彼女が台中から呼び寄せた台湾人姉妹李麗珍と許麗娟の足跡を具体的に明らかにすることができた。これによって、日本統治時代に育った台湾人姉妹の戦後の軌跡が具体的に把握でき、さらには彼女たちの日本と台湾の関係の中における文化的心情の変遷に迫ることが可能となった。 12月には、台北において、主に孫傅秀松からの聞き取りと、彼女が所蔵している資料の収集を行った。これにより、戦後数十年間における孫海峰・傅秀松夫妻の日本と台湾を結ぶ活動の詳細を、公文書・日記・手紙・手記・写真などの史料に即して跡付けることができた。 秋以降6か月の間に、これまでの研究成果を一書にまとめる執筆を進め、4月初めに脱稿し出版社に入稿した。夏までに研究を基礎にした一般書として出版の予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始時に、研究目的達成に向けての十分な基盤を築けていたことが研究推進上の大きな力となり、台北・台中・台南における聞き取り調査と実地調査、及び文字資料等の収集が計画以上に進展し、新たな成果を得ることができた。初年度の成果が大きかったことから、2年度目に予定していた国際シンポジウムを初年度の3月に国立台湾海洋大学で開催し、2年度目の3月には関西大学において国際シンポジウムを開催した。3年度目には、新たな研究成果を基盤にした一般書の執筆を終えることができ、すでに出版の運びとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
3年間の研究成果が大きかったことと、その成果を盛り込んだ一般書出版の運びとなっていることから、これまで明らかにできた成果の社会発信を目的とした国際シンポジウムを関西大学において開催する。これに合わせて、公表する研究成果の一層の充実を期して台湾における追加調査を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の新たな進展があったので全体分析を行い、その結果を平成26年度中にシンポジウムにおいて発表する予定であったが、平成26年度の調査過程でさらに新たに研究上重要な資料を収集できたことにより、新資料について十分な分析・検討を行った上でシンポジウムを開催することとしたため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
新資料について追加調査を実施するとともに、シンポジウムを開催して新たな研究成果を発表するための経費として使用する。
|