最終年度においては、これまでスマートGSを応用して作成したデータファイル、すなわち「内海忠司日記1910~1927年」、「中学5年間」、「明治31年~33年日誌」を分析する作業に入った。分析方法は、データファイルから判明する京都帝大時期、および山形、沖縄、香川、青森、島根、群馬、佐賀、愛媛、佐賀県における内地官僚時期の内海忠司の行動を追跡調査するとともに、データファイルに登場する人物のフルネーム、肩書などの洗い出す方法を採用した。こうした基礎作業から人物レファレンスを作成するとともに、数回にわたって開催した研究会において分析結果を議論するなかから「京都帝大法科大学の自己形成と人材養成」、「大正デモクラシー期の官僚ネットワーク」、「警察官僚の植民地移入と変容する政策」、「内外地の地方統治における官僚の役割」の4テーマが個別研究のテーマとして浮上した。 「京都帝大法科大学の自己形成と人材養成」は、内海が在籍していた頃の京都帝大法科大学について、教員、学生、学科課程・教授方法の変遷、演習の実際、卒業生の進路などを東京帝大との対比のなかで考えようとするものである。「大正デモクラシー期の官僚ネットワーク」は内務省出身官僚の社会事業行政を内地・外地とで比較して論じようとするものであり、「警察官僚の植民地移入と変容する政策」は島根県・群馬県・佐賀県警察部長時期と台北州警察部長時期、また「内外地の地方統治における官僚の役割」は愛媛県・佐賀県内務部長時期と台南州内務部長時期を比較検討しようとするものである。 今後の見通しとしては、すでに刊行した「内海忠司日記」の続刊として、以上の4テーマを「内海忠司日記1910-1927 京都帝国大学と内務官僚」として刊行したい。
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