中世禁裏財政は幕府財政からの補助金で幕府の政所によって運営されていたという通説を批判した。新出史料の「即位下行帳」の分析から、禁裏の賦課した諸国段銭や諸国所課を幕府が徴収して共同財政の惣用下行帳で、公家の伝奏切符と幕府方の惣奉行人らの下書との複合文書で財政支出システムを運営していたことをあきらかにした。業者は必要経費を立て替え払いし、請求書を禁裏の公家と幕府奉行人に示して手形を発給してもらい公方御倉から支払を受けるという債務を前提にした請求主義の決算システムになっていたことをあきらかにした。その研究成果は『室町廷臣社会論』(塙書房2014)として公刊した。
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